健保連海外医療保障_No.131_2023年3月
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61健保連海外医療保障 No.131の薬局と同様の規制に従うことを求めるものであった。このような規制の下では、メールオーダー薬局の薬剤師は、各州の免許を取得しなければならないことになる。これは、州際通商に不当な負担を及ぼす規制であり、連邦裁判所で違憲と判断される可能性があった25)。現在、ほとんどの州では、メールオーダー薬局に対して州薬事委員会への登録を求めている。これらの薬局は、所在地のある州において開設許可を得たうえで、特別な記録保持や顧客への情報提供、患者のためのフリーダイヤルサービスの設置などを条件に運営が認められている。テレファーマシー(telepharmacy)は、基本的には、オンライン配信プラットフォームなどの遠隔通信技術を利用して、薬剤師が患者への相談・支援を行ったり、薬局の運営を監督するといった実務を指している26)。テレファーマシーは、2000年代前半にノースダコタ州で農村部における薬局へのアクセスを確保する方法として登場し、その後20年間に全米に拡大した27)。新型コロナウイルス感染症の影響により、最近では、薬局にアクセス困難な地域の住民以外でもテレファーマシーの利用者が増加する傾向にある。テレファーマシーは、しばしば遠隔処方やオンライン処方と混同されやすい。遠隔処方およびオンライン処方は、通常、医師が遠隔医療を通じて患者に医薬品を処方することを意味する。一般的に、テレファーマシーには次の2つのタイプがあるとされる。ひとつは、遠隔地から薬剤師が調剤のために処方箋を準備したり、調剤作業を監督するなど伝統的な店舗型薬局の業務の一部に情報通信技術を取り入れたタイプのものである。いまひとつは、情報通信技術を用いた自動調剤機器により、処方箋の受け付けやラベル付け、調剤といった作業まで行うものである。テレファーマシーには次のような活動が含まれる。① 遠隔通信技術を利用した患者へのカウンセリング。② 服薬管理および疾病管理。遠隔通信を利用した薬物療法のモニタリング、慢性疾患の管理などである。③ 服薬指導(medication review)。患者が服用しているすべての薬のリストを作成するなど服薬調整(medication reconciliation)も含まれる。④ 遠隔検証(remote verification)。薬局で作業する調剤技師を薬剤師が遠隔から監督し、調剤を行う。⑤ 自動調剤機器を用いた遠隔調剤。病院やナーシングホームでは、薬剤師が不在であっても薬を配布できるように自動調剤機器が使用されている。テレファーマシーには、薬局へのアクセスが困難な患者が薬剤師による相談・支援を受けやすくなるという利点がある。その一方で、自動化された調剤機器を用いた調剤作業を薬剤師が現地で監視、監督していないために、医薬品の横流しといったリスクが生じることになる。テレファーマシーは、規制薬物を扱うことがあるため、オンライン薬局消費者保護法( Ryan Haight Online Pharmacy Consumer Protection Act of 2008)における「オンライン薬局」となる可能性がある。同法における「オンライン薬局」は、米国内外でインターネットを利用して規制物質を流通または調剤する薬局を指しており28)、司法省麻薬取締局(DEA : Drug Enforcement Administration)の登録を受けない限り、薬局の運営は違法となる。テレファーマシーの拡大に対応して、DEAは、遠隔薬局の登録に関する新たな規則の制定を検討している。州によるテレファーマシーの規制監督のあり方も今後の課題となっている。テレファーマシーを許可する薬事関係法を制定した州は、約半数にとどまっている。例えば、カリフォルニア州では、原則としてテレファーマシーを医療過疎地においてのみ許可しており、それ以外の場所(3)テレファーマシー(遠隔薬局)

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