健保連海外医療保障_No.131_2023年3月
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薬局・薬剤師に求められる役割健保連海外医療保障 No.13160① 協定の当事者である医師と薬剤師の情報② 薬剤師に認められた決定事項の種類③ 医師が薬物治療協定の遵守状況と臨床成果を監視する方法および必要時に介入する方法④ 患者に提供されるケアの効果を評価し、良好な成果を確保するために用いられる継続的な質向上プログラムについての説明⑤ 医師が必要または適切であると判断した場合に、薬剤師が行った薬物治療に関する決定を無効にできることを定めた規定⑥ 書面の通知により、当事者の一方の申し出により、薬物治療協定を解約できることを定めた規定⑦ 協定の発効日⑧ 協定に同意する旨の薬剤師と医師の署名および署名を行った日付医師と薬剤師が協定を締結し、協定書が州の薬事委員会に登録されると、薬物治療の管理は、基本的に薬剤師に委ねられる。薬剤師は、臨床検査の依頼、薬剤の投与計画の立案、モニタリングや患者へのカウンセリング、投与計画の修正や中止、薬物治療によるアウトカムの評価などを行う。薬物治療に関する協定はプロトコル(protocol)を中心に構成されている。プロトコルは、一定の条件の下で薬剤師に処方権を委譲することを規定したものであり、薬物治療に期待される効果や方針、手順、記録の方法などが記載されている。脂質代謝異常、高血圧、糖尿病、喘息、感染症などの疾患については、各専門学会による診療ガイドラインが作られており、これに基づいて作成されたプロトコルは薬剤師の行動指針として機能する。CDTMに関する協定では、薬剤師が薬物治療を適宜修正し、患者へのモニタリングを行うことを認めているが、薬剤師が薬物治療の開始や中止の判断を行うことは認めていない。CDTMは、医師と薬剤師との協定の範囲内で行われ、薬物治療の方針を大きく変更する必要が生じた場合には、患者の管理は医師に戻される。州薬事委員会は、薬剤師の免許付与、監督に加えて、州内で薬局の運営を希望する者に対して開設許可を行う権限を有している。州法が定める構造設備などの基準を満たした者に対して、州薬事委員会は薬局の開設を許可する。ほとんどの州では、薬局の所有者が、特定の薬剤師を管理責任者(PIC:pharmacist-in-charge)として指定することを義務づけている。PICは、通常、薬局の所有者とともに、薬局とその従業員に適用される法律その他の規則の遵守について責任を負う。州法では、一人の薬剤師が複数の薬局のPICとなることを禁じることが一般的である23)。一部の州では、薬局が専門的・倫理的な基準を維持し、従業員を適切に監督するためには薬剤師による管理が必要であるとして、薬剤師が部分的に薬局の所有者となることを求めている。例えば、ノースダコタ州では、薬局の開設者である法人の株式の一定割合を、当該薬局の管理運営者である薬剤師が所有することを義務づけている24)。またカリフォルニア州などいくつかの州では、処方者である医師が薬局と利害関係を有する場合に処方薬の選択において患者の最善の利益が損なわれる可能性があるとして、医師による薬局の所有を禁止している。医薬品の通信販売(mail-order)を専門とする薬局に対する規制監督のあり方は、長らく州の薬事委員会にとって困難な課題であった。1980年代から1990年代初頭にかけて、医薬品の通信販売が発展するにつれて、対面販売中心の薬局からなる団体は、メールオーダー薬局を規制する州法の制定を求めて州議会にロビー活動を行った。しかし、提出された法案の多くは、メールオーダー薬局に対して、州内の対面販売(2)メールオーダー(通信販売)薬局3. 薬局の開設および運営(1)州による薬局の開設許可

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