57健保連海外医療保障 No.131連法試験(Multistate Pharmacy Jurisprudence Examination)が用いられている9)。薬剤師免許は、すべての州において更新制である。免許の有効期間は1年から3年であり、免許を更新するためには、免許の有効期間中に、ACPEが認証した実施機関(薬科系大学、研修専門の事業者、病院など)において生涯研修(continuing education)を受講する必要がある。投薬ミス対策や薬事法、高血圧・喘息・糖尿等の疾病、肥満対策、治験、薬局経営などのテーマについて一定時間以上(ACPEの基準では年間で最低15時間以上)の研修を受講し、継続要件を満たした場合に免許の更新が認められる。免許を取得した薬剤師の約3分の1は、レジデントとして高度な訓練を受ける道を進む。レジデントとしての卒後研修(residency training)は臨床実習を中心としたものであり、認定専門薬剤師の取得や、病院での臨床薬剤師など専門性の高いポジションで勤務する上で必須のものとなっている。レジデントに対する卒後研修プログラムについては、病院薬剤師会(ASHP : American Society of Health-System Pharmacists)による認証評価が行われている。専門薬剤師認定機構(BPS : Board of Pharmacy Specialties)は、1976年に米国薬剤師会(American Pharmaceutical Association)が設立した薬剤師の認定機関であり、14の専門分野に関して専門薬剤師の認定を行っている10)。卒後研修を修了したのち、専門試験に合格することによって、専門薬剤師としての認定を得ることができる。レジデントとなった薬剤師が認定を取得するまでには平均して9年の期間がかかるとされている。認定専門薬剤師としての認定資格は、7年ごとに再認定を受けることで更新される。薬剤師に対する規制監督は、州薬事委員会が担当する。例えば、ペンシルバニア州では、州の薬事法(Pennsylvania Pharmacy Act)に基づいて、薬事委員会が、薬剤師免許の付与とともに、薬剤師の業務に関わる規則の制定を行っており、規則に違反した薬剤師に対しては聴聞手続きを実施した上で制裁処分(薬剤師免許の停止、取消しなど)を科している11)。州薬事委員会は、薬剤師としての業務遂行能力の欠如、不正行為、行為規範からの逸脱がみられる場合には、実際の被害が発生していなくても、薬剤師免許の取消しや停止を行うことができる。薬剤師の一般的な業務は次のようなものとなっている12)。① 薬の処方内容と投薬量に関する医師の指示が適正であるかを確認し、調剤する。薬剤師は、大半の調剤を製薬会社の指定文書に従って行うが、自ら成分を混合し薬を調合する場合もある。② 薬の処方内容が、患者が現在服用している別の薬と作用するなどして患者の健康状態に有害な影響を及ぼさないかを確認する。また虚偽の処方箋による調剤の要求(オピオイドなど)を拒否するといった役割も求められる。③ 患者に対して、服薬の方法とタイミングを指導し、副作用の可能性について説明する。④ 薬剤師によるインフルエンザワクチン接種の実施。多くの州では、薬剤師によるその他のワクチン接種の実施も認められている。⑤ 食生活や運動、ストレス管理などの健康上の問題や、効果的な健康器具や健康関連グッズについて患者に助言する。⑥ 保険関係書類を作成し、保険会社の協力の下で患者が必要な薬を得られるようにする。⑦ 調剤技師(pharmacy technician)と研修中の薬剤師に対する監督。アメリカの薬(4)卒後研修と認定専門薬剤師(5)薬剤師に対する州の監督2. 薬剤師の業務範囲(1)薬剤師の業務
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