薬局・薬剤師に求められる役割健保連海外医療保障 No.13152けた25)。コロナ禍における薬局の貢献は国民に認められ、薬局開局時間に関する法改定がNHSイングランドとNHS Improvementによって承認された26)。これにより薬局開局時間を延長し、患者や一般市民の健康や精神的な支援を行った。コロナ禍にはCOVID-19テストキットの無料配布やワクチン接種もいち早く薬局で提供し、英国全土での普及に努めた。COVID-19ワクチン接種サービスは、前述にもある通りNational Enhanced Serviceとして法律でも認められ、正式な薬局サービスとして提供されている。コロナ禍にはインターネットを使用したオンライン薬局や、薬局におけるオンライン診療も導入された。オンライン薬局も、通常の薬局と変わらずGPhCに登録しなければPOMsやPsは販売、提供できない。オンライン診療やオンライン薬局に関しては、コロナ禍の状況を考慮してGPhCが改定したガイドライン27)の順守を薬局へ徹底した。わが国では2015年に厚生労働省から「患者のための薬局ビジョン」が公表され、「門前からかかりつけへ」「立地から機能へ」といったキャッチフレーズが掲げられた。2016年には、かかりつけ薬局として地域住民にセルフケア支援を行う「健康サポート薬局」の届出制度が始まり、さらに、2019年の薬機法改正では、地域密着型の医療サービスを提供する「地域連携薬局」と専門医療機関と連携して専門性の高い薬学的管理を提供する「専門医療機関連携薬局」の知事認定の薬局制度が発足した。地域包括ケアシステムにおいては、地域住民が住み慣れた地域で医療・介護・生活を受けるためには、健康な人から病気になった人まで幅広い住民との接点がある薬局が、その機能を十分発揮する必要がある。人口構造・疾病構造の変化、治療技術・方法や治療の在り方の変化、人々の暮らしや価値観の変化などは医療の在り方に大きく影響しており、変化する社会に対応することが求められている。英国の大学における薬剤師教育は1999年に修業年限が延長されたが、薬剤師の臨床能力を最大限に活かそうと誘導しているかのように、2005年にはNHSサービスとしてリピート調剤が導入され、薬局でのアドバンスト・サービスが導入された。その後、アドバンスト・サービスは度々見直しが行われながらも、提供するサービスの種類が拡大・発展している。医師以外の職種への処方権の付与も拡大し、2021年のMPharm入学者からは、卒業する学生すべてが1年間のFoundation trainingを終えたのちにIPを持つ薬剤師となる。この20年間における英国の医療政策は、調剤主体の業務からなかなか脱却できないわが国の薬局政策において大いに参考になるものである。一方、英国においては、医療政策を念頭においた薬剤師教育が行われていること、資格取得後も専門スキルを担保しなければならない仕組みがあることが、薬剤師サービスの拡大・発展に大きく貢献している。このような仕組みを有さないとダイナミックな改革は困難であることが予想される。医療政策と卒前・卒後の医療者教育を医療政策とより連携させて、社会が求める医療サービスの質を担保し、提供していく仕組みの構築が求められる。注・参考文献1) 医療経済研究機構(2021)『令和2年度薬剤使用状況等に関する調査研究報告書』2) NHS prescription charges〈https://www.nhs.uk/nhs-services/prescriptions-and-pharmacies/nhs-prescription-charges/〉3) General Pharmaceutical Council. Standards for registered pharmacies. 2018〈https://www.pharmacyregulation.org/sites/default/files/document/standards_for_registered_pharmacies_june_2018_0.pdf〉4) Reissner, D.H. and C.A. Langley, eds. Dale and Appelbe's Pharmacy and Medicines Law - Twelfth Edition. 2021, Pharmaceutical Ⅺ. おわりに
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