薬局・薬剤師に求められる役割健保連海外医療保障 No.13150により薬剤師にIPが認められた。2009年にはIP薬剤師の適用外処方も認められ、2012年にはSchedule 1と2に該当する医薬品を除く全ての管理薬の処方が、Misuse of Drugs Act(England, Scotland, Wales)Regulationsの改正により可能となった。2012年には国立医療技術評価機構(NICE:National Institute for Health and Care Excellence)より処方権を持つ全医療従事者の安全で効果的な処方のためのコンピテンシーフレームワークも初めて開発された。IP薬剤師の活用をプライマリーケアでも広げる提唱が2015年のHealth Education Englandのレポート16)でもなされた。2015年から開始されたGP診療所でのIP薬剤師の試験運用もあり、プライマリーケアにおけるIP薬剤師の活用は増加している。IP薬剤師の更なる活用は2017年発表のPublic Health Englandによるレポートでも提唱されており、急性疾患対応にも活用が求められている。2016年にはNICE、Health Education England、RPSの同意を以て、RPSによる全処方権保持医療従事者の為のコンピテンシーフレームワークの更新が委託されている。これまでのIP薬剤師の活用やNHS Long Term Plan17)に沿って、Health Education Englandは2019年に「Advancing pharmacy education and training: a review」18)を発表した。これにより薬剤師登録前教育の更新が提唱され、GPhCによるレビューが開始される。2021年には新しい薬剤師登録前教育(大学学部教育MPharmと登録前トレーニングFoundation training)学習成果が更新され、2021年のMPharm入学者からは変更後学習成果に基づいた教育を受け、2025年卒業、2026年Foundation training修了により追加のトレーニングを受けずにIP薬剤師として登録することとなる。NHSイングランドは、試行的な取り組みとして、2016-2017年からGP診療所に臨床薬剤師を配置している。パイロットプログラムにおいて491人の薬剤師を雇用した結果、有用性が評価され 、2020-2021年までに2,000人の臨床薬剤師を支援するための拠出を行うこととされた。2021年1月現在、イングランドの約8,000のGP診療所に、約2,000人の薬剤師が配置されているが、今後は数年かけて7,000〜8,000人に増やす予定である。GP診療所の薬剤師はIPを有しており、主な業務は、診察室で患者と対面して患者のアセスメントと治療を行うこと、および、薬剤に関わるクリニカル・ガバナンスを担うことである。調剤を行うことはなく、退院後の患者が継続して治療できるようにCCGのフォーミュラリーから適切な薬剤を選定することや、慢性疾患患者に対する処方や投薬中止の判断、長期処方やリピート処方に問題がないか等の臨床的な薬剤レビュー、予防接種なども実施する。パイロットプログラムにおいては病院薬剤師の経験者が多かったが、現在は約7割が薬局薬剤師の経験者である。GP診療所に勤務するための研修としてCPPEが18か月間のプログラムを提供している。英国における薬局、または薬剤師の果たす役割は年々拡大しており、特に過去20年程でその活躍の場を広げてきた。薬局・薬剤師の役割の拡大には、薬剤師の処方権の取得も大きく関わるが、それに関しては上述したとおりである。医療提供の大部分を税収によって賄っている英国では、医療システムや医療サービスの変革にはエビデンスの収集が不可欠であり、保健省やNHSイングランドのような公的機関や、RPSのような職能団体による、その時々の医療ニーズ2. 処方権と薬学教育3. 処方権を持つ薬剤師のGP診療所への配置1)Ⅷ. 薬局・薬剤師の果たす役割の変化1. 公衆衛生・予防医療での役割拡大
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