49健保連海外医療保障 No.131GPhCに登録する薬剤師の内、NHSのシステム下で就業する薬剤師(病院薬剤師、またはNHS処方箋を扱う薬局薬剤師)をNHS薬剤師と言い、その薬剤師業務はNHS(Pharmaceutical and Local Pharmaceutical Services) Regulations 2013により明記されている。この法規はCOVID-19による医療危機により2020年に改定された。この法規によると、NHS薬剤師は以下の必須サービスの提供が義務付けられている。•Dispensing services(調剤)• Disposal service in respect of unwanted drugs(不要薬剤の廃棄)• Promotion of healthy lifestyles(健康生活の促進)• Signposting(地域のケア・サポート資源への適切な誘導)•Support for self-care(セルフケアのサポート)• Home delivery service while a disease is or in anticipation of a disease being imminently pandemic etc.(疾病の流行下または流行が予測される場合の宅配サービス)• Discharge medicines service(DMS)(退院時薬剤サービス)地域の薬局ではさらに薬局の特性や地域のニーズに合わせた医療提供が必要とされている。英国では医師以外の者への処方権が法的に認められており、薬剤師についても上記の薬学的サービスのほか、処方権を持つことが可能である。以下に、それに関連する制度等を紹介する。現在の英国薬剤師は、2種類の処方権、補助的処方権(SP:Supplementary prescribing)と独立処方権(IP:Independent prescribing)を持つことが可能である。•補助的処方権(SP)看護師によるSP導入を経た上で、1999年のCrownレポート11)によりSP薬剤師導入の提案がなされた。これを受け、当時労働党政府により発表された「The NHS Plan」白書12)では医療システムのキャパシティーを増加し、待ち時間を減少、患者の満足度を上げるため、医療専門職の境界を崩し新しい働き方を導入するための医療の現代化が提唱された。その際、看護師だけでなく他医療提供専門職の処方権についても言及されている。これを基に政府はModernisation Agencyを設立し、地域レベルでの医療サービスの再構築や看護師の処方権についての協議会を立ち上げた。2002年には薬剤師のSP導入に関する協議会も立ち上げられ13)、その結果2003年よりHealth and Social Care Act 2001の改正によってSP薬剤師制度が導入され、初めてのSP薬剤師が2004年に誕生した。SP薬剤師は医師や歯科医師と共に、限定された治療管理計画(CMP:Clinical management plan)の下で医薬品の提供をするが、独立した処方はしない。CMPに含まれる必須情報やSP薬剤師が処方可能な医薬品についてはHuman Medicines Regulations 2012, Schedule 14によって定められている。SP薬剤師は更なるトレーニングにより、以下に示す独立処方薬剤師になることも可能である。長期疾患の管理の為、2005年にはSP薬剤師、看護師ともにSchedule 1を除く全ての管理薬(Controlled drugs)と適応外医薬品のSPがMisuse of Drugs(Amendment)(No.2)Regulationの改正により可能となった14)。•独立処方権(IP)SP薬剤師制度導入後すぐに、SPの制限による急性疾患に対する医療サポートへの限界が指摘され、SP薬剤師誕生の一年後には独立処方権(IP)の導入に関する協議会が発足されている15)。これを受け、2006年のNational Health Service(Miscellaneous Amendments Relating to Independent Prescribing) Regulations 改正2. NHS薬剤師に求められる業務Ⅶ. 薬剤師への処方権の付与1. 処方権の種類
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