健保連海外医療保障_No.131_2023年3月
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41お、国民は登録したGPを自由に変更することができる。病院は、原則としてGPの紹介に基づいた治療を行うため、救急以外は予約された患者(elective patient)が利用する。公立のNHS病院だけでなく、民間病院も保健当局と契約を交わしNHSの下で医療サービスを提供することができる。英国は完全医薬分業制であるが、無薬局地域の住民へのGPによる調剤など一部例外が認められている。薬局でのジェネリック代替調剤(医師が処方した銘柄を後発医薬品に変更して調剤すること)は認められておらず、処方箋に先発医薬品がブランド(銘柄)名で記載された場合には、その銘柄の医薬品が調剤される。ブランド名が記載される処方は限られており、大部分の処方は一般名で記載される。処方が一般名で書かれた場合は、先発医薬品でも後発医薬品でもどちらを調剤してもよいが、償還価格は後発医薬品の償還価格となる。一般名処方に対してどの後発医薬品を調剤したか処方医への報告義務はない。なお、病院内では薬剤師による代替調剤が日常的に行われている。薬局で処方薬を受け取る際は、免除対象者でない限りは自己負担額が求められる。イングランドにおける自己負担額は、薬価に関わらず1医療政策機関薬剤師・薬局規制機関全国薬剤師協議会薬剤師職能団体医薬品規制機関出所:筆者作成。健保連海外医療保障 No.131グレートブリテン(GB)イングランドウェールズ中央議会地方議会(GPhC:General Pharmaceutical Council)王立薬剤師会(RPS:Royal Pharmaceutical Society)医薬品・医療製品規制庁(MHRA:Medicines and Healthcare products Regulatory Agency) 薬剤につき9.35ポンド(2021 年3月31日以降)である2)。継続して薬剤給付を受けている人や頻度が高い人に対しては割引できる仕組みがある。患者負担金が免除となる対象者は、一定の年齢(16歳未満、16-18歳のフルタイムの学生、60歳以上)や出産前後の女性、疾患や所得などによる社会的弱者である。病院で給付される薬剤は、治療と同様に、患者属性に関わらずすべて無料である。英国は、正式名称をグレートブリテンおよび北アイルランド連合王国(United Kingdom of Great Britain and Northern Ireland)と言う。その国土をイングランド、ウェールズ、スコットランド、北アイルランドの4つの地域に分け、政治や規制に違いがある。首都ロンドンがあるイングランドでは中央議会が、また、他3つの地域では地方議会が地方政治を行っている。薬剤師に関する規制においては、北アイルランド以外の3つの地域を合わせたグレートブリテン(GB)と、北アイルランドで異なる。表1に英国の地域別の政治、規制関連組織の構成を示す。イングランド・ウェールズ・スコットランドを含むGBでは、全国薬剤師協議会(GPhC: General Pharmaceutical Council)がPharmacy Order 2010という法律に基づき、薬剤師・薬局テクニシャン・薬局の規制をしている。薬剤師スコットランド地方議会北アイルランド薬剤師会(PSNI:Pharmaceutical Society of Northern Ireland)北アイルランド地方議会表1 英国の地域と医療・薬剤師規制組織の構成3. 医薬分業の状況4. 薬剤給付に対する患者負担金Ⅱ. 薬局・薬剤師を管轄する組織

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