健保連海外医療保障_No.131_2023年3月
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英国は税金を財源とする医療保障制度のもとで医療サービスが提供されており、予算の範囲内で効率的にサービスを提供することが重視されている。薬局に求められる役割はこの20年で大きく変化し、薬物治療の適正化、公衆衛生、予防医療での役割が拡大している。薬局のアドバンスト・サービスには、薬剤師による相談サービス、ワクチン接種、C型肝炎検査、新規薬剤サービス、禁煙指導があり、薬局は地域医療の重要な担い手となっている。また、処方権を有する薬剤師が数多く誕生し、活躍している。この背景には、医療政策を念頭においた薬剤師教育、資格取得後の専門スキルを担保する仕組みが関わっている。薬局・薬剤師に求められる役割健保連海外医療保障 No.13140英国民が受ける保健医療サービスの大部分は、国民保健サービス法(National Health Service Act of 1946)に基づいて1948年に創設された国民保健サービス(NHS)から提供されている。NHSは、国家が国民に公平で無料の保健医療サービスを供給することを理念とした制度であり、被保険者から徴収した保険料を主たる財源として保険者が運営する社会保険方式ではなく、一般財源(税金)を主たる財源として必要なサービスを供給する税方式で運営される。特徴としては、保健医療サービスの供給が国の責任で行われること、財源の大部分が税金により賄われること、全国民に対し原則として無料で提供されること、予防やリハビリテーションサービス等を含む包括的な医療保障であること、予算の範囲内で計画的に提供されること等が挙げられる。拠出を条件とせずに必要な場合はいつでも住民に無料の医療サービスを提供するという考え方は現在でも基本的に変わっておらず、外来処方薬の定額負担などのいくつかの例外を除き、患者負担は課せられていない。医療提供体制においては、一次医療と二次医療が明確に区別されている。一次医療の担い手はかかりつけ医(GP:General Practitioner)、看護師、薬剤師、歯科医などであり、国民は自分のGPまたはGP診療所を選び予め登録しなければならない。病院や専門医の診察を受けるためにはGPの紹介が必要であるため、GPは医療保障制度におけるゲートキーパーと呼ばれている。GPは、登録住民の診療を行うだけでなく、健康管理、健康増進の指示を与えたり、診療の結果、入院治療や専門医療等が必要であれば、患者を病院または専門医に紹介したりする。な帝京平成大学教授亀井 美和子Kamei Miwakoノッティンガム大学講師荒川 直子Arakawa Naoko2. GP(かかりつけ医)制度Ⅰ. 医療保障制度の特徴1)1. 国民保健サービス(NHS)特集:薬局・薬剤師に求められる役割英国の薬局・薬剤師

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