健保連海外医療保障_No.131_2023年3月
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薬局・薬剤師に求められる役割健保連海外医療保障 No.13138検査結果の分析・解釈に5ユーロが支払われる。検査の適格者は、国立がんセンター(Institut national de cancer: INCa)の作成した自己アンケート(auto-questionnaire)を用いて定められる。薬剤師の役割は、検査キットを受け取った患者が自宅に帰ってからその検査を適切に行えるよう、助言を与えることにある。薬剤師は、キットの使い方を説明し、ボトルを添付の送料着払いの記入済み返信用封筒に入れて医生物学ラボに送付すべきことを患者に理解してもらう。キットの内側にあるID票を埋める。50歳以上75歳未満で大腸がんのリスクが著しく高い者は、検査キットによる検査の適格性を欠く。その場合、薬剤師は、適切な医療を受けられるよう、速やかにかかりつけ医に受診するよう促す。未使用の検査キットは、医療専門職向けのポータルサイトで薬局薬剤師は無償で注文できる。2023年12月31日までは、検査キットの引渡し1件につき5ユーロが報酬として支払われる(海外県・海外領土は1.05倍)。2024年1月1日以降は、検査キットの引渡しに3ユーロ、その後患者が実際に検査を行ったときに2ユーロが薬剤師に支払われる(海外県・海外領土は1.05倍)。3)大腸がんの検診9)2022年協約では、新たに薬局で大腸がんの検診を行えるようになった。フランスでは、大腸がんが死亡率で第2位、罹患率で第3位のがんであることから、これらへの対策が公衆衛生上の重要な課題になっているためである。大腸がんの組織的な検診に関する全国計画では、50歳以上75歳未満の者について、2年に一度は検診を行うことを定めている。検診を促し、欧州で推奨されている65%の検診率に到達するため、検診キットの頒布を薬局薬剤師にも拡大したのである。医薬品の交付の際に明確かつ正確な情報提供と勧告を行うことは薬剤師の基本的な任務であるが、さらに一定の患者については、薬剤師からよりいっそうの支援を行うことが求められている。そのため、薬剤師は、妊娠期間の如何にかかわらず、妊娠中の女性に対して、必要と思われる場合に、適切な助言や提案を行うこととされた。具体的には、非ステロイド性消炎鎮痛薬(アスピリンを含む)の服用、その他の物質(アルコール、サプリメント、植物療法、アロマセラピーなど)の消費または使用の場合の情報提供または注意喚起、ANSMが妊婦向けに作成したチラシ(「薬と妊娠、よく考えて」)の配布または妊婦のMESのアドレス宛にメッセージ送信、MESのアドレス宛に医療保険金庫の「妊娠中の女性」向けページと医療保険金庫が作成(5)患者への支援者として1)一定の慢性疾患者その一つは慢性疾患者である。2022年協約では、経口抗凝固剤(ビタミンK拮抗薬(AVK)または直接経口抗凝固剤(AOD))を服用している患者、吸入コルチコステロイドによる根本的治療を行っている喘息患者、経口抗がん剤を服用している者、多数の薬を服用している高齢者(personnes âgées polymédiquées)が対象となっている。薬剤師は、これらの患者に対して、①治療への参加の評価、②患者の治療の理解の評価、③患者による治療の適切な遂行の援助、④助言・教育・予防の役割の強化という任務を負う。これらの任務について、薬剤師は年額で定額の報酬を受け取る。2)妊娠中の女性さらに、2022年協約では、新たに妊娠中の女性への支援が定められた。薬剤師による妊婦支援の目的は、妊娠中の女性に対し、妊娠期間中の催奇形性物質・胎児毒性物質の消費に関するリスクとワクチン接種の重要性についての意識を高めてもらうことにある。

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