健保連海外医療保障_No.131_2023年3月
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既に3年も続くコロナ禍中、ドイツの薬局は基本業務である医薬品の安全・安定供給と情報提供に徹し、「薬局だけは、どこも開いている」と言われるほどロックダウン中も営業を続ける義務を遂行し、地域住民に安心を与え続けてきた。規模の大小や大都市・地方、医院・病院からの距離といった立地条件に関わらず、各薬局とも24時間体制を採れる標準機能を備えており、医薬品以外の品■えも良く、どこからでも処方箋を受け付けることのできるオールかかりつけ薬局である。薬剤師がその職能をフルに発揮できるには、薬局に医薬品その他必要な品物が短時間で■い、服薬指導や健康サポートに欠かせない専門情報がレセコンに装備されており、業務時間内に仕事も勉強も終えることのできる時間的な余裕や、薬局と薬剤師を保護する制度といった業務環境の充実が必要である。ドイツでは長年にわたり様々な薬剤費抑制政策が行われ、薬局経営に大きな影響をあたえているが、この業務環境条件がいまだ■っている。1健保連海外医療保障 No.131公的医療保険制度の内容は社会保障法典第5巻(Sozialgesetzbuch V)1)に定められている。ドイツも日本と同様、皆保険制度を採っており、国民を含めたドイツ居住者は公的医療保険か民間医療保険に加入する義務がある。年収が66,600ユーロ(2023年)を超える者、自営業者、公務員は民間医療保険を選択することもできる。公的医療保険の保険者はKrankenkasse、疾病金庫と呼ばれ、一般地域疾病金庫(Allgemeinortskrankenkasse、AOK)や代替金庫(Ersatzkasse、EK)などの6種類があり、それぞれ給付業務を行っている。2023年現在、法律で定められた医療保険料は被雇用者の場合、給料の14.6%で労使折半である。加入者が支払うべき保険料には上限が定められている。徴収された医療保険料と税収から支出される国の補助金は、医療基金(Gesundheitsfonds)に集められ、各疾病金庫に振り分けられる2)。この他、各疾病金庫は給付業務安定の目的で追加保険料を徴収できることになっている。料率は各疾病金庫で異なり、2023年は0.3〜2.0%となっている。疾病金庫は保険料を給付業務のみに使うことが定められており、保険料を利潤増加目的で他の事業や投資に回すことは認められていない。1990年代初頭に1,000を超えていた疾病金庫は、その後の改革により統合・合併が進み、2023年1月時点で96にまで減少している3)。ドイツで公的医療保険制度がその産声をあげたのは1883年6月15日、当時の首相ビスマルク政権下で、これより企業被雇用者、職人、商業従事者に加入義務を課した。ドイツは社会保障ドイツ ロッテンブルク市 セントラル薬局 開設者・局長薬剤師 アッセンハイマー 慶子Assenheimer KeikoⅠ. 公的医療保険制度と薬剤給付の仕組み1. 公的医療保険制度(1)法的根拠特集:薬局・薬剤師に求められる役割有事に頼りになるオールかかりつけのドイツ薬局

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