35健保連海外医療保障 No.131ある。許否の判断に先立ち、代表的な薬剤師組合と薬剤師会地方評議会の意見聴取も行われる。許可の際には、人々のニーズや住民数、既存の薬局数などが考慮される。地域的な不平等が生じることを防ぐため、開設地の最寄りの薬局からの距離制限も存在している。もっとも、人々の生活・消費様式の変化を受け、2018年1月3日オルドナンスにより、開設条件の現代化が図られたほか、医薬品へのアクセスがより困難な地域での措置なども定められている。薬局には常に少なくとも薬剤師1名が常在していなければならない。薬局所有者たる薬剤師が不在にする場合には代理の薬剤師を置く必要がある。また、売上高に応じて、一定数の補助薬剤師を配置することが求められている。なお、医薬品供給チェーンの安全性の強化、インターネット上での医薬品販売の枠組設定および医薬品の変造防止に関する2012年12月19日法律により、薬局も、非処方箋薬のインターネット販売ができるようになった。薬剤師会の統計によれば、2022年1月1日現在、外来の薬局は、フランス本土で20,318か所、海外県・海外領土で613か所、総計20,931か所が存在している。また、院内薬局については、フランス本土で2,274か所、海外県・海外領土で65か所、総計2,339か所が存在している。フランス本土の院内薬局のうち、公的部門の院内薬局は991か所、私的部門の院内薬局は1,283か所である。公衆衛生の保護と保健製品の特殊性に基づき、薬剤師および薬局には、薬事に関する独占が認められてきた。薬剤師は保健製品、特に医薬品の着想から製造、流通、販売に至るまでの全段階において積極的な役割を果たすべきであるという考えである。特に、①薬局所有権の独占と②医薬品販売の独占が重要である。前者についてはすでに述べた。後者については、医薬品を人々に販売できるのは薬剤師だけであるという専門職の独占と、医薬品を販売できるのは薬局においてだけであるという場所の独占からなる。ただし、薬局がない地域では、医師が患者に対し自らの診療室で医薬品等を販売することができる(薬剤師ではない者が薬局ではない場所で、という例外)。また、法律による例外も存在する(例えば、2014年3月17日法律により、排卵・妊娠検査薬は自由に販売できる)。薬局薬剤師協約の内容は、その時点での薬局または薬剤師に関する保険医療政策上の関心の所在を明らかにするものでもある。以下、現行の2022年協約の主な条文の表題を掲げておこう。1条 全国協約の枠組と射程2条 保険製品の交付Ⅰ 薬剤師の任務Ⅱ 医薬品交付報酬の料金表Ⅲ 高額の医薬品の交付Ⅳ 保健製品の正当な交付3条 患者への支援(accompagnement)Ⅰ 慢性疾患者への支援Ⅱ 妊娠中の女性への支援4条 予防Ⅰ ワクチン接種Ⅱ A群連鎖球菌性咽頭炎の診断用簡易検査の実施Ⅲ 単純性膀胱炎の検診Ⅳ 大腸がんの組織的な検診5条 医療へのアクセスと治療経路Ⅰ 薬局での遠隔診療Ⅱ 協約に基づく医薬品の時間外対応(permanence pharmaceutique)Ⅲ かかりつけ薬剤師Ⅳ 在宅復帰サービスの枠組における在宅(5)営業規制(6)薬局の現状3. 薬局・薬剤師の役割の多様化(1)現行の薬剤師協約の項目2. 薬業の独占(monopole pharmaceutique)
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