薬局・薬剤師に求められる役割健保連海外医療保障 No.13134薬局(pharmacie officinale, officine de pharmacie4))は、人々に医薬品その他の薬局独占に係る製品を小売販売する施設である。公衆衛生法典では「薬の小売と調剤を行うための施設」と定義されている5)(L.5125-1条)。小売業(commerce de détail)なので、他の薬局への医薬品の販売(卸売)は原則としてすることができない。薬局では、医薬品等の小売販売以外にも、薬局薬剤師に求められる役割の多様化に伴って、プライマリーケアへの寄与、時間外対応の公役務への参加、治療教育への参加、健康状態の維持改善のための助言の提供、いくつかのワクチン接種の実施といった、さまざまな活動が行われている。薬剤師は誰でも薬局を開設できる資格を有するが、免状のほかに、少なくとも6か月の補助経験が必要とされる。薬剤師が所有して経営することのできる薬局は、原則として1か所のみである。薬局の経営は他の専門職(医師、獣医師、助産師、歯科医師等)と兼ねることができない。違反すれば3,750ユーロの罰金が科される(公衆衛生法典L.5424-5条)。また、生物学的分析ラボの管理者等である薬剤師や製薬企業等の責任ある薬剤師は、薬局の経営を兼ねることができない。フランスでは、伝統的に、薬剤師は自らが名義人である薬局の所有者でなければならないとされてきた。薬局の所有と経営は不可分であり、それゆえ、免状を持たない者は薬局を所有できず、所有者と経営者がともに薬剤師であるとしても、別の人物である場合には認められない。貸与することも禁じられている。もっとも、会社形態をとる場合には、理論的には、薬局の所有者は法人だが、実際の経営は自然人が担うことにより、所有と経営が分離することになる。合名会社、有限会社(SARL)、自由業実施会社(SEL)、一人有限会社(EURL)が薬局を所有する場合、これらの社員となり得るのは薬局薬剤師のみであり、また、各社1つしか薬局を経営できないことになっている(公衆衛生法典L.5125-17条3項)。さらに、社員たる薬剤師は、個人としても他の会社においても、他に薬剤師としての活動を行うことが禁じられている(公衆衛生法典L.5125-17条6項)。もっとも、1992年8月28日デクレにより、一人の薬剤師は、自らが所有・経営する薬局のほかに、2つのSELで持ち分や株式を保有できること、また、薬局を経営する1つのSELは、他の2つのSELにおいて持ち分や株式を保有できることが定められた。さらに、2001年12月11日法律は、SELで働いていない専門職が議決権の過半数をとれるようにし、自由業専門職財務参加会社(SPFPL)を制度化した。SPFPLの目的はSELの持ち分や株式を保有することにあった。ただし、その適用デクレが定められたのは、2013年になってからである。2013年6月4日デクレによれば、SPFPLに資本参加できるのは、当該薬局を現に経営している薬局薬剤師のほか、引退した元薬剤師については10年間、その者が死亡した場合にその者の被扶養者については死亡時から5年間に限られる。SPFPLは薬剤師会に登録される。また、薬局薬剤師のSELについて、一人の薬剤師が参加できるSELの数は(自らの経営する薬局のほかに)4つまで、一つのSPFPLが参加できるSELの数は3つまでとされる。SELの資本の過半数は、現に当該薬局を経営している薬剤師のみに留保される。薬局を開設するには、事前にARSから許可を得る必要がある。移転や再編の場合も同様で(2)一薬剤師一薬局の原則(3)所有と経営の不可分性の原則(4)開設規制Ⅲ. 薬局1. 定義(1)定義と特徴
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