27開かれている。②免状の取得フランスの大学で薬学を履修し、薬学博士号を取得することが必要である。修学期間は全3課程で、6年または9年である。第1課程の3年間のうち、1年次は医療系の共通教育(PACES)を受け、2年次から医学、歯学、薬学、助産学に分岐する。2年次への進級に際しては、医師と同様、政府が定める人数制限(numerus clausus)があった(表1参照)。2019年7月24日法律(医療制度の組織および転換に関する法律)により、2020年の進級分からは廃止された(各大学で受入数を定める)。2・3年次は薬学の一般教育の課程で、理論学習と実習が行われ、修了すると薬学一般教育免状(DFGSP)が与えられる。ここまでの3年間が第1課程に当たる。第2課程の4・5年次は薬学の専門教育の課程で、専門的な学習と将来の職業実践を見据えた取り組みが行われ、修了すると薬学専門教育免状(DFASP)が与えられる。最後の第3課程は、短期課程(6年次の1年間)と長期課程(9年次までの4年間)に分かれる。短期課程は、薬局での勤務または製薬企業での就業を目指すものであり、6年目は職業オリエンテーションに充てられる。長期課程は、病院での勤務または医生物学の専門研究を目指すものであり、インターンを行う。これらの履修を経て、薬学博士号が取得される。そのほか、他のEU加盟国またはEEA参加国によって交付された、同等のものとみなされる他の薬剤師資格でもよい。1986~2002200320042,2502,4002,600出所:Leca et al.,(2022)および法令等の定めを参照して、筆者作成。健保連海外医療保障 No.1312006~20072008~201020052,7902,9903,0902011~20132014201520163,0953,0993,0973,095③職業倫理の保障患者と薬剤師業全体の保護のため、薬剤師には職業倫理を遵守し公序良俗に違反しないことが求められる。実際には、職業倫理の遵守等の有無は、薬剤師会への登録や薬剤師会による懲戒の段階で個別に審査される。重大な倫理違反があった場合や刑事罰を受けた場合などに、登録が拒否されることがあり得る。④薬剤師会への登録希望する職業遂行形態に応じて、薬剤師会の7つのセクションのいずれかに登録する必要がある。例えば、薬局を所有する薬剤師の場合には、セクションAの薬局薬剤師(pharmaciens dʼofficine)の地方リストに登録されることになる。一人の薬剤師が複数のセクションに同時に登録されることもあるので、登録者数と薬剤師数は一致しない。近年では逆に、薬剤師資格を有しながら薬剤師会への登録をしないケースも増えており、若年の有資格者の「蒸発率(taux dʼévaporation)」は3割に上っている。登録権限を有する薬剤師会の組織(セクションAの場合には地方評議会、他は各セクションの中央評議会)は、要件の充足を審査し、登録の可否を決定する。登録を拒否する場合には理由の付記が必要である。登録が拒否され得る場合として、犯罪記録簿に登録された非違行為の存在、精神的不調、薬局所有者たる資格の不証明、職業的独立の欠如などがある。なお、過去の懲戒歴は必ずしも登録拒否を導くわけではない。登録に関する決定に不服がある場合には、全国評議会への不服申立て(appel)が可能である。全国評議会の決定に不服がある場合には、行政2017201820193,1043,1243,261表1 人数制限(numerus clausus)の推移 (上段:年、下段:人)
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