薬局・薬剤師に求められる役割健保連海外医療保障 No.13126の償還価格を決定する際に考慮される。CTの答申を受けて、医療保険金庫全国連合会(UNCAM)が当該医薬品の償還率を決定する。償還率は、医薬品の効能によって、①100%(代替不可能で特に高価な薬)、②65%(SMRが「顕著または大」の薬剤)、③30%(SMRが「中」の薬剤)、④15%(SMRが「小」の薬剤)の4段階に分かれる。次いで、HASに設置された医療製品経済委員会(CEPS)が、ASMRの評価等を考慮し、製薬企業との交渉を経て、償還額の算定基礎となる償還価格を決定する。CEPSは関係省庁の代表者からなる組織である。以上の手続を経て、医薬品の償還決定がなされ、官報で告示される。なお、償還率65%および30%の医薬品については、自己負担額は補足的医療保険による保障の対象となる。償還率15%の医薬品および償還対象外の医薬品については、補足的医療保険の内容次第である。また、2008年に創設された「保険免責」と呼ばれる定額負担により、外来医薬品の購入の際には、1回0.5ユーロが自己負担となる。ただし、1日2ユーロ、年間50ユーロが上限となり、18歳未満の子や妊娠6か月以降産後12日までの妊産婦、CSS受給者等は免除される。フランスの医薬品は、購入時に医師等の処方箋が必要な処方箋薬と、不要な非処方箋薬とに分かれる。フランスでは医薬分業が図られており、処方箋薬については、医師から交付された処方箋を市中の薬局に提示して購入することになる。なお、フランスではリフィル処方も認められている。かつては紙の処方箋が用いられたが、近年ではオンラインシステムを利用した電子処方箋(e-prescription)の普及が進められている。2020年11月18日オルドナンスにより、2024年12月31日までの完全義務化が定められている。患者が自らの「私の医療サイト(Mon espace santé:MES)」を開設している場合には、医師は、患者のMESの電子医療文書(dossier médical numérique)に処方箋を登録する。この処方箋にはQRコードが付されており、患者は薬局でこれを提示して処方箋薬を受け取ることになる。MESは医療保険金庫と保健省が提案する、セキュリティの保護された個人のデジタル空間で、すべての被保険者が利用できるインタラクティブなデジタル保健手帳となるものである。その内容は、本人の診療情報(処置、検査結果、放射線治療、処方箋、ワクチン接種記録など)、本人の身体的特徴(身長、体重、血圧、血糖値、アレルギーなど)、健康状態に関するメッセージサービスからなる。薬剤費の償還は、医療給付と同じく、電子償還システムを利用して行われる。被保険者は各人に交付されたVitaleカードを薬局で提示し、薬局薬剤師は、被保険者のVitaleカードと自らの薬剤師用Vitaleカードとをシステムに接続し、償還に必要な情報を保険者に送信する。審査の後、被保険者の所定の口座に償還額が振り込まれることになる。フランスでは、薬剤師として業務を遂行するための要件として、伝統的に、①フランス国籍の保有、②免状の取得、③職業倫理の保障、④薬剤師会への登録、⑤職業遂行を危険なものとするような障害や疾患の不存在が挙げられてきた。EU統合の影響等を受け、それぞれの内容には一定の変容も見られる。①フランス国籍の保有現在では、フランス国籍保有者のほか、EU構成国の所属民、アンドラ市民、欧州経済領域(EEA)参加国の所属民、その他フランス人が当該国の免状を有していれば当該国内で薬剤師として活動できる国の所属民にも、薬剤師業は(4)医薬品の購入と薬剤費の償還方法Ⅱ. 薬剤師の職業1. 薬剤師業の遂行要件
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