健保連海外医療保障_No.131_2023年3月
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25健保連海外医療保障 No.131医療保障制度に関しては、1928-30年の社会保険法以来、社会保険方式が採用されてきた。戦後の社会保障体制の基礎を築いた1945年のオルドナンスでは、すべての国民を対象とする普遍的な統一的医療保険制度の導入が目指されたが、各業種の利害関係もあり、上述の通り、制度は職業別に分立することになった。職業を基準とする体系では、無業の者などが無保険者となるおそれがあるため、フランスでは、一般制度への加入の拡大を通じた一般化が進められてきた。1978年の個人保険制度は、未加入者を本人が拒否しない限り一般制度に加入させるもので、これにより一般制度は全人口の8割以上をカバーするに至った。その後、1995-96年のジュペ改革における医療保障の普遍化の模索と挫折を経て、1999年7月27日法律により普遍的医療保障(CMU)が創設された。これは基礎的CMUと補足的CMUからなるが、前者はフランス国内に安定的かつ正規に居住する無保険者をいずれかの基礎制度(通常は一般制度)に加入させるもので、後者は低所得者の補足的医療保険への加入を支援するものである。基礎的CMUの創設により、フランスでも皆保険体制の実現をみることになった。さらに、2016年社会保障財政法は、普遍的医療保護(PUMa)を創設し、各人の加入する制度の別を超えた医療給付の統一化を行った。PUMaは、フランスで就労するか、安定的かつ正規に居住するすべての者に対し、保健医療サービスの費用を支給するというものである。安定的かつ正規に居住する者とは、正規の在留資格を有し、3か月以上継続して居住する者をいう。これにより、以後、医療給付に関しては、どの制度に加入するかは重要ではなくなった。また、成人はみな個人としてPUMaの給付を受けることとなり、被扶養者の概念は未成年者についてのみ残された(被保険者に扶養される18歳未満の子)。もっとも、未成年者も16歳以上であれば、申請により個人としてPUMaの給付を受ける権利が認められる。また、補足的CMUは連帯補足医療給付(Complémentaire santé solidaire:CSS)に改められた。その後、前述の通り、RSIの廃止により、2020年1月から、自営業者の医療保険は一般制度において行われている。PUMaにより保障される医療給付の範囲は、公的医療保険による医療給付の範囲と同じである。したがって、薬剤の支給もPUMaによる給付の範囲に入っている。薬剤給付は原則として償還制である。償還対象となる薬剤は、被保険者償還可能医薬品リスト(LSPR)に収載された医薬品である(ポジティブリスト方式。社会保障法典L.162-17条1項)。外来医薬品については品目ごとに設定された償還率で償還される。外来医薬品の償還率は、100%、65%、30%、15%の4段階に分かれている。入院医療で使用される薬剤は、入院医療費に含めて給付が行われる。リスト収載までの手続は以下の通り。販売許可を得た医薬品は、PUMaによる給付の対象となることを希望しなければ、そのまま自由価格で販売されるが、償還対象となることを希望する場合には、まず、高等保健機構(HAS)の透明性委員会(CT)による医薬品の効能評価(SMR)と画期性評価(ASMR)を受けることが求められる。SMRは、医療上の便益に関する指標(絶対評価)であり、有効性、副作用、対象とする疾病の重篤度、代替治療の有無、代替治療と比較した場合のメリット、公衆衛生上の利益等の観点から、顕著または大(majeure ou important)、中(modéré)、小(faible)、不十分(insuffisant)の4段階で評価される。「不十分」以外の場合には償還対象となる。ASMRは、その医薬品によってもたらされる治療上の進歩を示す指標(相対評価)であり、顕著(majeure)、大(importante)、中(modérée)、小(mineure)、なし(inexistance)の5段階で評価される。ASMRは当該医薬品(2)医療保障制度の概要(3)PUMaにおける薬剤給付

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