健保連海外医療保障_No.131_2023年3月
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21健保連海外医療保障 No.131ドイツでも薬剤師の職能の拡大とレベルアップが叫ばれており、また、薬局業務はデジタル化、DX化が進み対応を余儀なくされている。ドイツ薬剤師連盟(ABDA)とその傘下機関により、それらは支えられている。3年以上も続くコロナ禍中、薬局の基本かつ最重要業務は医薬品の安全・安定供給と服薬指導・情報提供であると改めて実感した。まず、医薬品の安全・安定供給が成り立ってこそ、薬剤師のさらなる職能発揮が可能となる。新型コロナウイルス感染対策を具現する上で、ドイツの薬局は大きな役割を果たしてきた。過去、何もしていないのに■けすぎと、バッシングの嵐にさらされたドイツの薬局であるが、有事に頼りになると、少しは名誉■回できているようである。日本には、「私、失敗しないので」の名ゼリフで大人気、有名女優が外科医のヒロインを演じるテレビ番組があるが、患者を石のように動かない状態にできる麻酔薬や手術中の非常事態に備える医薬品があるから失敗しないのである。手術が大成功でも、鎮痛剤がなければ患者には大きな苦痛が伴い、眠れず・動けず・食べられずといった状態が続き、回復が遅れるどころか致命となる。医薬品なくして医療は成り立たず、その医薬品の安全・安定供給を担う薬剤師の使命は非常に重い。2023年、終わりの見えないコロナ禍中、医薬品供給不足も加わり、日本の薬剤師の方々の業務も煩雑になり量も増え、大変なご苦労をなさっていると想像する。日本では計数調剤や分包、お薬手帳の管理、複雑な可算報酬制度で、会計までに非常に時間がかかる。薬剤師だからこそできる業務なので、在宅医療、かかりつけ、健康サポート、地域連携等、業務拡大と職能発揮が叫ばれるのは良いが、薬剤師の方々の負担はさらに増える。業務環境を整えることも考えていくべきではなかろうか。とはいえ、医薬品の安全・安定供給を脅かしかねない、調剤業務の外部委託、それも国外企業の参入は慎重に検討すべきである。注・参考文献1) SGB 5 - Sozialgesetzbuch (SGB) Fünftes Buch (V)〈https://www.gesetze-im-internet.de/sgb_5/BJNR024820988.html〉(アクセス日:2023年1月14日)2) Gesundheitsfonds〈https://www.10. 解熱鎮痛剤シロップの調合・販売ドイツではここ数年来、品薄となる医薬品の数が増えている。1度品薄になると、その製品の供給不足が長期で続くようになった。2022年に入って重要医薬品の供給不足は非常に深刻な状況である。2023年1月現在、乳児・小児用の解熱鎮痛剤シロップと座薬は全国でほぼ完売状態である。発注可能な乳児・小児用の抗菌剤シロップもほとんどない。公開されている供給不足リストには1月17日現在391品目の要処方箋医薬品が掲載されている35)。この数字には供給不足のOTC医薬品数は含まれていない。新型コロナウイルス感染のみならず、RSウイルスやインフルエンザによる感染も拡大しており、咳止め、感冒薬も不足している。ドイツ薬剤師連盟(ABDA)はこの事態を重く見、医薬品および医療品の連邦機関(Bundesinstitut für Arzneimittel und Medizinprodukte)、公的医療保険中央連合会(GKV-Spitzenverband)、連邦保険医連盟(Kassenärztliche Bundes-vereinigung)と協定し、薬局で調合したイブプロフェンもしくはアセトアミノフェン含有シロップを処方・保険償還できるようにした。ドイツ薬剤師連盟(ABDA)の傘下にある1専門機関、NRFは、薬局で調合できる医薬品のレシピを編みだし、改良・改定する業務を行っている。品薄解消に薬局が調合する上記の解熱鎮痛剤シロップもNRFレシピが推奨されている。各薬局が同じレシピに従った同品質の調合品を患者に提供できる。ここでも1つレシピをつくり全薬局に役立てるという、統一性・効率性が活かされている。まとめ

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