健保連海外医療保障_No.131_2023年3月
23/77

薬局・薬剤師に求められる役割健保連海外医療保障 No.13120ら薬局へ配送・ 薬局はできる限り早く医院へ備品とともに供給というものである。保管温度が-60〜-90℃という医薬品をどのようにして薬局が医院へ届けるのかと最初は不思議に思ったが、このドイツ薬剤師連盟(ABDA)のマニュアルを見て納得した。初回配送では、メーカーから入手した医家向添付文書や希釈マニュアルなどの情報パッケージを添えた。国やメーカーが発表する副作用発現情報をアップデートし、診療に加えワクチン接種とその予約調整に追われる医院の問い合わせに備えた。図9よりドイツは保険開業医のキャンペーン開始から急ピッチで接種率を上げていったのが見て取れる。メーカー→医薬品総合卸→薬局→開業医の統制のとれた連携物流戦略が功を奏した。欧州連合(EU)加盟国は統一書式のワクチン接種証明書と感染経験証明書を採用しており、欧州連合(EU)内における証明書の相互認証を簡便かつ可能にしている。通常、国民には初回の乳児検診より黄色の国際予防接種手帳が与えられ、のちの乳幼児検診時や成人になって受ける予防接種の種類、接種日、ロット番号が記載される。幼稚園への入園や渡航目的地によっては、特定の予防接種を受けたことを証明する必要があり、この国際予防接種手帳を紛失すると大変なことになる。大切な国際予防接種手帳の紛失を防ぎ、個人の行動制限を少なくし、接種済み検査を迅速にするためにドイツでも新型コロナワクチンデジタル証明書の発行が急がれた。この業務をいち早く導入できたのが薬局である。2021年6月14日より開始し、全薬局の90%以上にあたる17,000薬局が3週間で1,600万以上のデジタル証明書を発行した34)。実際には、国の保健機関であり、感染症対策・研究を行うロベルト・コッホ研究所がデジタル証明書の発行元であるが、作成・印刷業務を薬局が代行している形である。ドイツ薬剤師協会(DAV)と各連邦州薬剤師協会(Landesapothekerverband)が協力し、同研究所の証明書発行用サーバーにアクセスできるプログラムを各薬局のために短期間で作成し、この代行業務が可能になった。同プログラムは使用が簡単であるとともにセキュリティーもしっかりしている。1つプログラムを作り全薬局で利用するという統一性と効率性の高い戦略である。新型コロナワクチンの接種がスタートした際、ドイツ赤十字などの移動接種チームや接種センターが接種を行っていたが同時にデジタル証明書を作成できる機能を持ったところは非常に少なかった。開業医が接種をスタートさせた際も、同時にデジタル証明書を作成できる、もしくは、時間的な理由から作成しているところは少なく、作成業務の多くを薬局が担う形になった。証明書の作成料金は国が負担し、薬局は月ごとに作成プログラム付属の機能で統計を出し、作成数を処方箋集計センターを介して夜勤手当ファンドに申告する。国から作成費の支給をうけた夜勤手当ファンドは集計センターを通して各薬局に作成費を支給する。当初は1枚作成につき18ユーロ、現在は6ユーロの作成費が薬局へ支給されている。証明書を携帯に読み込むアプリが開発されており、これまで主に電話機能しかなかった携帯からこれを機に高機能のスマホに買い替えた方々、特に高齢者の方々が、使い方がわからないと薬局へもってこられることがある。スマホの機能に詳しい若いスタッフが丁寧に説明する様子はどこの薬局でも見られたはずである。そして、さらに持ち運びが便利なクレジットカードサイズのデジタル証明書を希望者から手数料を取って発行するところもある。公に認められる文書を作成できることは、薬局の高い信頼度を示すものである。ドイツでは現在、薬剤師によるインフルエンザと新型コロナの予防接種が認められている。8. デジタル証明書の作成9. ワクチン接種

元のページ  ../index.html#23

このブックを見る