薬局・薬剤師に求められる役割健保連海外医療保障 No.13118これもある意味での地域連携であろうか。欧州連合(EU)にはBiocidal Products Regulation (BPR, Regulation (EU) 528/2012)という法令があり、薬局であれ企業であれ手消毒液の調合はできても、それを登録なしに勝手に手消毒液として明記し販売できない規則である。品薄時、国内ではこの規制を緩和し、指定のレシピに従って薬局が調合したものであれば登録なしに販売できることとなった。品薄解消に向けて薬局に与えられたこの使命は大きく、医療機関、自治体、地域住民からの問い合わせは多く、薬局が調合したものならば安心との地域住民の反応に、薬局ブランド力と薬局への信頼が見て取れる。薬剤師の職能の1つは数ある情報の中から必要で信頼できる情報を選りすぐれることである。その際、幅広い薬学知識が基本となる。信頼できる情報源から、感染予防、最新の行動制限に関する情報を地域住民に届け、手洗いや手消毒の徹底とマスクの着用を奨励した。コロナ禍以前、マスク着用はドイツでは馴染みがなく、自主的に着用にする人は少なかった。2020年12月9日、新型コロナウイルスに感染すれば重症化しやすいとされる高齢者や慢性疾患患者、その他リスクグループに属する国民へ高防御性、FFP2マスクを配布する政策が打ち出された。FFP2の透過性はKN95やDS2におよそ相当する。物資の調達と配布は各薬局が担当することとなった。2020年12月15日から2021年1月6日の間、まず、薬局は来局する該当者に身分証明書を提示してもらい受領書に住所・氏名・生年月日を記入し、サインをしてもらった後にマスク3枚を配布する。同該当者には2021年始までに公的医療保険を通して2枚のマスククーポン券が郵送され、クーポン券1枚につき6枚のFFP2マスクと交換できる。告示から配布スタートまで1週間足らずの準備期間しかなく、大慌てしたドイツ薬局で、入荷が間に合わず配布開始が遅れた薬局もあった。初日は多くの薬局の前にマスクを希望する人で長蛇の列ができ、その様子は大きなニュースとして報道された。初回3枚の配布には、取り扱う処方箋枚数に応じて各薬局に支度金が渡された。クーポン制になると、各薬局は提携する処方箋集計センターへ受け取った枚数を毎月自己申請し、クーポン券1枚につき該当者が払う2ユーロを引いた償還額が薬局へ支払われた。ドイツ薬剤師連盟(ABDA)の統計によれば、この間薬局が配布したFFP2マスクは4億4,400万枚といわれる。希望者の利便性を図るため、テストに適した間取りのある全国4,490薬局が無料テストを実施した。自治体や民間企業がテストセンターを設置しているところもあるが、薬局が参加することで、より多くの検査が可能になる。テストセンターより早朝に営業を開始する薬局や時間外・週末勤務を行う当番薬局がテストを行うことができれば、緊急に陰性証明書が必要な人々にとって大変有難いサービスとなる。連邦州薬剤師組合(LAK)や自治体の研修を受けた薬局にテスト機関として登録することが認められ、テスト料は国が負担する。陰性証明書が必要でなくとも、早期感染検知は感染拡大防止に重要で、いつでも入手できる状況にあるのが望ましい。介護施設への訪問や会合前などに自己テストを行ったり、家庭内で感染が疑われる際にすぐに使えるよう買い置きする目的でもテストキットが購入される。感染の波がピークに達した時期は需要が急に増えるが、当初から供給量は比較的安定している。スーパーなどの量販店が突発的に特売を行うこともあるが、薬局のように継続して販売しているところは少ない。量販店では大量に仕入れ、安価2. 感染予防啓発活動3. 高防御性、FFP2マスクの配布4. 新型コロナ抗原テストの無料実施5. 新型コロナ抗原簡易テストキットの継続販売
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