健保連海外医療保障_No.131_2023年3月
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17健保連海外医療保障 No.131医薬品に関する問い合わせは多く、連携においても医薬品の安全・安定供給、情報提供が基本となっている。バカンスのために働くといわれるドイツでは、夏休み、クリスマス、復活祭や聖霊降臨祭で学校が長期で休みになると、医院も交代で長期休暇を取り休診となる。この間、医院に代わり薬局が代替薬治療を受ける麻薬中毒患者への投薬・服薬管理を行うことがある。治療費・薬剤費は公的医療保険が負担し、社会復帰を可能にしている。薬剤師の業務はその時代の要求により変わり、地域住民の薬局への期待も変化する。健康に関する一番身近な相談役が薬剤師である。予約が要らず、気軽に立ち寄れて、処方箋がなくとも何も購入しなくとも入れ、様々な質問ができるところが薬局であり、このようなことを行えるのは、行うのはドイツでは薬局だけである。薬局へは実に多くの問い合わせが来るが、即答できないことも多い。薬局で質問をする患者、顧客、訪問者は、必ずしも即答を求めておらず、しかし、調べて回答しますと対応すれば喜んでもらえるケースが多い。ネットで何でも検索できる現代だが、薬剤師はその中から有用な情報を選べると思われている。また、自身の質問に対し薬局が真■に対応してくれることで、人として大切に扱われていることが嬉しいようである。そういった地域住民の期待に応えるため、営業時間内に勉強も検索もでき、来局者にできるだけ時間がとれるよう業務の効率化が求められる。ワクチン接種法の改正により2022年2月8日より薬剤師が新型コロナワクチンの接種を行えることとなった30)。連邦医師組合(Bundesärztekammer)と連邦薬剤師組合(BAK)が共同で指導要綱を作成し31)5モジュール12コマ(1コマ45分)の理論、実務、救急の研修を受けた薬剤師に接種認可証が与えられている。12歳以上の希望者に接種できる。研修は連邦州ごとに各連邦州薬剤師組合(LAK)が行っている。ドイツ薬剤師連盟(ABDA)によると全国約18,500の薬局のうち526店が接種を開始、約6,000名の薬剤師が認定を受けている32)。数はまだ少ないが、新しい業務に果敢に取り組む薬剤師の姿がここにある。いくつかの連邦州でパイロット試験的に行っていた薬剤師によるインフルエンザワクチンの接種は、2022年10月より全国で行えることになった。同ワクチンの接種にも各連邦州薬剤師組合(LAK)で行われている研修を受ける必要がある。新型コロナウイルス感染予防対策で果たした薬局の役割は大きく、薬局の持つ機能とスタッフの職能が大いに発揮された。各薬局が対応し、地域完結型の感染予防業務を可能にするため、ドイツ薬剤師連盟(ABDA)主導の統一された方法が採られた。2020年春、急速で爆発的な新型コロナウイルスの感染拡大により、感染予防に欠かせない手消毒液が国内で品薄状況となった。メーカーでも医薬品総合卸でもほぼ完売状況で、発注をかけても入荷しない状況が数か月続いた。ネット販売では価格が数倍に高騰する製品もあり、地域住民の不安と憤りは増すばかりであった。この間、多くの薬局が自局内のラボで手消毒液を調合し、一般用には50mLや100mL瓶に小分けをし、良心的な価格で販売を行い品薄状況に対応した。ドイツ薬剤師連盟(ABDA)の統計は、2020年3〜5月の間に薬局が調合した手消毒液は全国で約510万リットルと発表している。どの薬局にも医薬品の調合に必要な原材料があり、ある程度の量のエタノールやイソプロパノールが在庫としてある。事態を予測した薬局は、2019年末よりアルコールの備蓄に奔走していた。地域の化学工場やエタノール蒸留所に掛け合い、局方規格のアルコールをその地区の薬局に必要最低限量を分けてもらう努力もした。5. 薬局におけるワクチン接種Ⅵ. コロナ禍中の薬局の取り組み1. 薬局による手消毒液調合と販売

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