5健保連海外医療保障 No.130(3)疾病金庫による費用負担(第20条第6項)疾病金庫は、上記1)〜3)の給付全体に対して、被保険者1人当たり7.52ユーロ/年を支出しなければならないとされている。このうち、2)の社会的な生活空間における健康増進および病気予防のための給付に対して2.15ユーロ以上、3)の事業所における健康増進のための給付に対して3.15ユーロ以上を支出しなければならない。疾病金庫の実際の支出額がこの額を下回った場合には、残余の額を翌年の同目的の給付に対して支出しなければならない。2019年には、計23,221(従業員総数では約288万人)の事業所がこの助成を利用した。その産業別内訳は、工業29%、医療・福祉20%、サービス業17%、行政12%、商業9%等であった。事業所の規模は、従業員10人未満5%、10人以上50人未満22%、50人以上100人未満20%、100人以上250人未満29%、200人以上500人未満17%、501人以上1,500人未満12%、1,500人以上6%であった(割合の合計が100%にならないが、原典のママ)27)。2019年の実績では、これらの分野への支出は、被保険者1人当たり8.64ユーロ、総額6億3,100万ユーロであった。これは、2019年の公的医療保険の総支出である約2,519億ユーロ28)の約0.25%である。健診・検診は、病気のリスクの把握および早期発見(2次予防)のための給付に属する。被保険者は、疾病金庫の負担で――自己負担なしで――健診・検診を受けることができる。健診・検診は年齢で区分され、①18歳以上の成人のための健診・検診と、②乳幼児・青少年のための健診がある。被保険者は、健診・検診を受診する権利(法的請求権)を有し、健診・検診を希望する被保険者は、個別に家庭医等において受診する。以下、公的医療保険法で定める枠組みおよび概要を紹介する。健診・検診には、成人を対象とするものと、乳幼児・青少年を対象とするものがある。成人を対象とするものには、①がん以外の生活習慣病等の早期発見を目的とする健診と、②特定の種類のがんの早期発見を目的とするがん検診がある。また、②のがん検診のうち、乳がんマンモグラフィ・スクリーニング、子宮頸がん検診および大腸がん検診は、疾病金庫が被保険者に対して定期的に通知を行って受診を促す仕組みをとる(「組織化されたがん早期発見プログラム」)(表1参照)。以下に、公的医療保険法の規定に沿って、これらの枠組みを紹介する。18歳以上の被保険者は、また、がんの早期発見のための検診を受ける権利も有する。健診・検診が対象とする病気は、有効な治療法がある病気でなければならず、健診において把握される健康上のリスクは、生活習慣病の予防措置により改善することができるものでなければならない。また、健診・検診は、医療給付と同様、経済性の原則を満たさなければならず、必要なものに限定されなければならない。さらに、健診・検診における検査法および診断法は、①病気の前の段階および早期段階が診(1)成人を対象とする健診・検診(第25条)18歳以上の被保険者は、年齢や性別に応じて健診を受ける権利を有する。健診の目的は、健康上のリスクおよび負荷を把握および評価し、国民医療の観点から重要な疾病を早期に発見することとされる。健診においては、また、病気予防のための助言、予防接種記録の確認が行われる。必要な場合には、医師の証明書の形式で、病気予防のための勧告(Präventionsempfehlung)が発行され、疾病金庫による生活習慣病の予防のための給付(第20条第5項)が勧奨される。また、健康のために生活様式を変えるための支援や各種サービス(運動や栄養等の分野)に関する情報提供が行われることもある。1. 健診・検診の枠組みⅣ. 健診・検診の枠組みおよび概要
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