71健保連海外医療保障 No.130(2)医療費抑制とかかわってまた2020年からは、外国人住民が健康検診を受診しやすくするために、問診票、結果通知書、案内リーフレットおよび関連ホームページなどを14か国語で翻訳して情報を提供している。同じく2020年からは、障害者のための新しいサービスも開始した。たとえば、視覚障害者のために、点字問診票とボイス・アイ・サービス(voice eye service)を導入しており、移動が不自由な障害者のためには、移動と問診票作成を支援する健康検診ヘルパー・サービスを提供している。同サービスは現在、障害の有無に関係なく、すべての国民が利用できるように徐々に拡大されている。以上のような受診率の向上のための努力に加え、健康検診の質向上のための努力として、たとえば、検診機関に対する評価が行われている。2020年から一部の機関(1,515か所)に対して評価を実施しその結果を公開した。その後、評価の対象をさらに拡大しており、その結果を順次公開していく予定となっている。また2020年からは、健康検診の結果を有効に活用するために、危険要因の保有者(肥満、血圧、血糖、中性脂肪、コレステロール)に対して、生活習慣の改善による心・脳血管疾患の予防のための案内メールを送ったり、健康検診結果の説明および相談を行ったりするなど、事後管理のための努力が以前より増して行われている。冒頭で述べたように、国家健康検診の目的は、健康に対する危険要因と疾病を早期に発見し治療を受けることで、人間らしい生活が保障され、健康な生活を営むことができるように支援することである。疾病を早期に発見できたかどうか、健康な生活を営むことに寄与したかどうかを把握すべく、国家健康検診総合計画では、たとえば、成人と高齢者のための一般健康検診の成果を評価する指標として、慢性疾患に関しては、認知率と治療率および調節率(危険要因の改善)、死亡率、そしてがんに関しては、5年生存率と早期病院訪問率および死亡率などを提示している。それらの指標にもとづいて、疾病管理庁で健康検診の成果を調査し、その調査結果を報告している。表17〜表20は第3次計画の発表のさいに報告された調査結果である。簡単に紹介するとつぎの通りである。まず、慢性疾患の認知率・治療率・調節率をみると全体的に改善されていることがわかる(表17)。次に、慢性疾患による死亡状況をみても、死亡者数と死亡率の両方において持続的な減少が確認できる(表18)。さらに、がんの5年生存率に関しても全般的に改善されており(表19)、最後にがんによる死亡率においても同様の傾向がみられている(表20)。健康検診の成果に関しては、他の調査研究でも似たような傾向が報告されており(キム・テウン 2021:29-32)、そのため、健康検診の成果が高く評価されることがしばしばある。ただし、いうまでもなく、それらの成果は、健康検診による疾患の早期発見によるもののみでなく、そこには、医療技術の発展や国民の意識変化など他の要因も深くかかわっている。そのため、以上のような調査結果だけをもって健康検診の成果を評価することには注意が必要であろう。健康検診の実施に対しては、先述の健康増進への効果とともに、医療費抑制に対する効果も期待される。それに対する研究結果も多数発表されている。たとえば、健康検診が、疾患の早期発見とともに医療費の抑制に効果があるとする研究結果が出ている(保健医療研究院 2014)。また、健康検診が個人の医療費支出を増加させた側面があるものの、過剰な医療支出の抑制には効果があったとする研究もある(イ・ファンヨン/パク・ジェヨン 2014)。健康検診の主な項目とかかわって国民健康保険給付費の支出抑制効果を分析した最近の研究によると(キム・テウン 2021)、たとえば、慢性疾患の場合、この10年間、国民健康保険財政に占める高血圧の給付費支出3. 成果(1)健康増進とかかわって
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