健保連海外医療保障 No.13041) 生活習慣病の予防のための給付(第20条第5項)2) 社会的な生活空間における健康増進および病気予防のための給付(第20a条)3) 事業所における健康増進のための給付(第20b条)諸外国における健診・検診について空間(Lebenswelten)(居住地域、保育施設、学校、大学、介護施設、余暇施設等)における健康増進および病気予防のための給付、3)事業所における健康増進のための給付の3つである。2)および3)の給付は被保険者個人に対するものではなく、健康増進措置を行う各施設等に対するものであり、構造的に機能することを目的とする。以下に、概要を紹介する。生活習慣病の予防のための給付は、生活習慣病(心疾患、糖尿病、肥満、がん、骨格や筋肉の病気等)の予防のための講座の受講者への疾病金庫による助成である。講座の分野には、運動、栄養、ストレスコントロール、中毒症対策(たばこ、アルコール)の4つがある。講座は、受講者が生活習慣および健康状態を批判的に省み、健康を志向した行動を自立してとるように促すことを目的としなければならない。また、各講座は疾病金庫の認証を受けなければならず、講座提供者は、必要な資格を証明しなければならない。さらに、講座の効果は科学的に証明されなければならないとされる。経済性のために、講座は、6歳以上の6〜15人程度を対象とし、オンラインによる講座の提供も可能である22)。会員費は、給付の対象とならない。2019年には、計180万5,889人が助成を受け、何らかの講座を受講した。その分野別内訳は、運動68%、栄養2.5%、ストレスコントロール29%、中毒症対策0.5%であった23)。社会的な生活空間における健康増進および病気予防のための給付は、各生活空間(居住地域、保育施設、学校、大学、医療・介護施設、余暇施設、スポーツ施設等)において健康を増進する継続的な仕組みを構築し、強化する措置に対する疾病金庫による助成である。助成対象の措置は、健康によい生活習慣を学び、実践することを可能とする措置であり、例えば、市町村による公営プールや自転車道の設置、保育施設における保育士による運動指導、学校の校庭における球技場の設置などがある24)。病気予防や健康増進が特に必要な者ほど、病気予防および健康増進のための給付を利用しない傾向が確認されているため、各生活空間の集団を対象とするこの給付は、特に、健康に関する機会を平等とすることに資するとされる。助成は、疾病金庫が各地の保健所と協力して行う。2019年には、計45,077の施設が助成を受けた。その内訳は、保育施設34%、基礎学校(初等教育)27%、総合学校・ギムナジウム等(中等教育)22%等で25)、児童・生徒を対象とするものが大半を占め、若い世代に重点が置かれている。事業所における健康増進のための給付は、事業所において健康を増進する継続的な仕組みを構築し、強化する措置に対する疾病金庫による助成である。この給付は、被用者という集団を対象とする。助成対象の措置は、例えば、健康を増進するような経営・コミュニケーション文化、動きを取り入れやすい(bewegungsfreundlich)執務環境、健康によい社食、健康増進プロセスを調整・統制する事業所内の委員会の設置などである。このため、疾病金庫は、被保険者、事業所責任者、産業医および労働安全衛生の専門家の関与を得て、事業所の健康に関する状況(リスクとポテンシャル)を調査し、健康上の状況の改善および健康資源の強化のための提案を行い、その実施を支援する。疾病金庫は、助成に際し、労災保険や、労働安全衛生を所管する州の官庁と協力する。疾病金庫は共同で、地域の調整機関を置き、特に中小企業を対象として助言と支援を行う。助言と支援には、例えば、助成に関する情報提供、事業所における健康増進のための事業所間ネットワークの構築、事業所が助成を希望する場合の疾病金庫の仲介が含まれる26)。
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