諸外国における健診・検診について表4 国家健康検診の目的実施(2007年)、「健康検診基本法」の制定(2008年)、医療給付受給者に対する健康検診の実施(2012年)、学校外青少年に対する健康検診の実施(2016年)、地域加入者の世帯員および職域加入者の被扶養者に対する健康検診の適用拡大(2019年)など、対象者をさらに拡大し、検診の項目に関しても拡充を図ることとなった。1990年代末以降の以上の一連の制度拡大および拡充の過程には、2000年を前後として、それまで分立型で運営されてきた医療保険が国民健康保険という1つの制度として統合され、それと同時に、単一の保険者として国民健康保険公団が誕生したことが重要な役割を果たしたとされる(チョ・ビリョン/イ・チョルミン 2011:667)。この時期に、公団のイニシアティブのもとで「他の先進国では類例のみない包括的な健康検診システムが整備された」(ibid.)といえる。そのさい、まず、制度的な面でみると、何より2007年の乳幼児に対する健康検診の導入と2012年の医療給付受給者に対する健康検診の実施が重要であろう。すなわち、前者によって、乳幼児、学生、成人、高齢者といったすべての生涯周期に合わせた健康検診が実施されることになり、後者によって、これまで健康保険加入者のみを対象として実施されてきた健康検診がすべての国民のための健康検診となったのである。その後、2019年に健康保険の地域加入者の世帯員と職域加入者の被扶養者が健康検診の適用対象となり、これらにより、実質上の国家健康検診が体系的に整備され実施されることとなったといえる。つぎに、内容的な面でみると、2008年における「健康検診基本法」の制定が注目に値する。同法によって、健康検診の法的根拠が設けられたこと、また、それまで大きな変更なく持続してきた検診項目に修正が加わり改善が図られたとともに、健康検診の目標と事後管理および評価基準が明確化したことが大きな意味をもつ。冒頭で述べたように、2010年からは、同法にもとづいて5年ごとに「国家健康検診総合計画」を策定することとなった。2021年には第3次計画が策定され、現在、同計画にもとづいて健康検診が実施されている。これについては後に再度取り上げる。以上のように展開してきた健康検診は現在、乳幼児健康検診、小・中・高の学生を対象とする学生健康検診と学校外青少年健康検診、成人および高齢者を対象とする一般健康検診とがん検診から構成されている。全体的な仕組みと概要は表3の通りである。なお、表4ではそれぞれの目的を示している。乳幼児健康検診と学生健康検診は、成長異常の早期発見と健康増進を目的としており、高齢者を含む成人を対象とした一般健康検診は高血圧や糖尿病など心・脳血管疾患の予防および早期発見を目標としている。なお、がん検診はがんの早期発見と治療がその目的となっている。国家健康検診と関連してもっとも上位に位置する法は「健康検診基本法」(2008年制定)である。同法によれば、国家健康検診とは、健康検診総合計画にもとづいて、国家と地方自治体が実施する健康検診事業を指している。同法は、乳幼児(6歳未満)の発達と成長異常などの早期発見を目的とし、診察および相談中心の計8回の検診を行う。乳幼児健康検診学生健康検診学校外の青少年健康検診青少年の成長異常の早期発見と健康増進を図る。成人の心・脳血管疾患(高血圧、糖尿病など)の予防および早期発見を目的とし、臨床検査および相談中心の検診を行う。がんの早期発見と治療のために6大がんの検診を実施する。※6大がん:胃がん、肝臓がん、乳がん(40歳以上)、大腸がん(50歳以上)、子宮頸がん(20歳以上)、肺がん(54〜74歳)一般健康検診がん検診出所:キム・テウン(2021:8)より筆者作成。目的健保連海外医療保障 No.130602. 全体的な仕組み3. 主要内容(1)関連法律
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