健保連海外医療保障_No.130_2022年9月
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諸外国における健診・検診について表1 医療保障の適用現況(2020年12月)て、職域医療保険が最初の一歩を踏み出した。1977年には、低所得者を対象とする「医療保護法」が制定され(2001年に「医療給付法」に改正)、また同年、「公務員および私立学校教職員保険法」が制定された。その後、職域医療保険の加入対象が徐々に拡大していき(1979年に300人以上、1981年に100人以上、1983年に16人以上)、1988年には5人以上の事業所に雇用されている者までが強制加入の対象となった。このような職域医療保険とともに、1980年代に入ってからは、農漁村や都市の住民を対象とした地域医療保険の展開が始まった。1981〜82年に全国の数か所でモデル事業を実施し、その成果をふまえて1988年に農漁村の住民、そして翌年の1989年には都市の住民を対象とした地域医療保険が導入された。これによって、職域医療保険と地域医療保険からなる皆保険が実現した。1989年に皆保険が実現されたさいに、ただちに問題となったのが、以上のような職域および地域医療保険の展開過程のなかで増えてきた数多くの保険者(400以上)の間に、財政状況や給付範囲および水準に大きな格差が存在していることであった。そこで保険者の統合と財政の調整に向けての改革が進められた2)。その結果、1997年には「国民医療保険法」が制定され、それにもとづいて地域医療保険(保険者数227)と公務員および私立学校教職員医療保険が統合された。2000年には新たに「国民健康保険法」が制定され、職域医療保険(保険者数127)を含むすべての保険者が統合された。全国民を対象とした単一制度としての「国民健康保険」の誕生である。同法によって「国民健康保険公団」が生まれ単一の保険者となった。このような保険者の組織統合とともに、2003年には保険財政の統合が行われた。以上のように展開してきた国民健康保険は現在、単一制度による皆保険体制として全国民をカバーしている。企業などで雇用されている者とその被扶養者は職域加入者として、それ以外の農漁村と都市の住民などは地域加入者として、国民健康保険の強制加入の対象となっている。国民健康保険の強制加入とならない低所得者(日本の生活保護にあたる「国民基礎生活保障」の受給者など)は医療給付の対象となる。なお、国民健康保険の保険料率は2020年現在、職域加入者の場合は6.67%であり、その負担は基本的に労使折半である(私立学校教職員の場合は本人50%、雇用主30%、政府20%)。地域加入者の場合は、所得把握が容易でないことから、所得とともに財産や世帯構成などから保険料が算出される。地域加入者に対しては、保険料収入に加えて政府支援金が投入される。国民健康保険と医療給付からなる医療保障制度の現状をみると、表1に示しているように、2020年現在、全国民(5,287万人)の97.1%(5,135万人)が国民健康保険の被保険者(職域加入者:3,715万人、72.3%、地域加入者:1,420万人、27.7%)であり、残りの2.9%(152万人)は医療給付の対象となっている。以上の医療保障制度の歴史的経緯と現状を背景にし、以下では、健康健診について検討したい。検討に入る前にここで、用語の使い方について簡単に説明しておきたい。日本では一般的に、全身を対象とした健康状態の定期確認を「健診」と呼び、がんなど特定の病気を見つけるために行う検査を「検診」と呼ぶ。それに対して韓国では、それらを区別せず両方を合わせて「健康検診」と呼ぶ。本稿では韓国で用いられている「健康検診」という用語を用いて論をすすめていきたい。合計国民健康保険職域加入者地域加入者医療給付出所:保健福祉部(2021a:712)計適用人口(万人)構成比(%)5,2875,1353,7151,420152100.097.1(100.0)(72.3)(27.7)2.9健保連海外医療保障 No.130562. 現状

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