健保連海外医療保障_No.130_2022年9月
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(2)NHS Screening Programmeの受診率表2  NHS Screening Programmeで実施される各種検診の受診率諸外国における健診・検診について比較はできないが、John Robson, Isabel Dostal et al.(2015)と表1をあわせて受診率を見ると、2009年度から2013年度まで増加傾向にあったであろうことが読み取れる。2014年にPublic Health Englandによって新たに結成した専門家集団である、Expert Scientific and Clinical Advisory Panelによって2017年に出された報告書「Emerging evidence on the NHS Health Check: findings and recommendations(NHS Health Checkによる証拠の現れ:発見と提案)」によると、人々がNHS Health Checkを受診しない理由として、次のようなことがあげられている25)。・ 健康診断がどのようなもので、どう自分たちと関係するのか、無料なのかどうか、といった知識や理解の欠如。・受診する時間がない。・ 健康診断は予防的なものであるという認識が欠如しており、自分自身が健康であると自覚している時は受診しなくてもよいと考えてしまう、健康診断の目的の誤解。・ 自身の健康に対する悪い報告は知りたくないという考えや、ライフスタイルに対し注意を受けたり助言をされたりしたくない、という予防医療への忌避。・自分の都合の良い時間に予約が取れない。・ 薬局などに提供されるプライベートな情報の機密性に対する不安。上記の理由を改善し受診率を上昇させる対策として、対象となる人々の社会人口学的特徴に応じた形で正しい情報を周知することや、人々の意識を高めるためのキャンペーンを行うこと、薬局や地域といった場所だけでなく職場での受診機会を設け、利便性を高めることなどが挙げられている。同報告書では、NHS Health Checkの成果として、実施後最初の5年間で2,500の心疾患と脳卒中を予防したと推計している。さらに、30〜40人に1人の割合で高血圧、80〜200人に1人の割合で2型糖尿病の診断がなされ、そして6〜10人に1人の割合で心血管疾患の高リスク者であることを明らかにできた、ということもあげている。NHS Screening Programmeの最新のデータとしては2019年度のものがあるが、これは2019年4月から2020年3月までのデータとなっており、一部がCOVID-19の流行時期と重なっているため、通常の年度とは異なる結果が生じている可能性がある。そのため、ここではイギリス政府のウェブサイトから取得できる、2014〜2018年度までのデータを元に各種検診の受診率の推移を確認する26)。受診率の傾向として、子宮頸がん、乳がんの検診が低下しており、腹部大動脈瘤の検診がやや上昇している。乳がんを除く検診の受診率は大きな変動は見られていない。2017年度版までのNHS screening programmes:annual reportでは、各種検診での取り組みについても述べられている。しかし、2018年度以降のレポートではデータの提示が主となっており、活動などの報告が割愛されている。2017年度版までのレポートでは、NHS Health Checkと同様、各種検診の現状や受診率を上昇させる取り組みなども示されていた。たとえば、正しい情報の開示や、検診を受診しないことによっ糖尿病性網膜症2015年度82.8%72.7%75.8%56.2%79.8%2016年度82.2%72.0%70.5%59.0%80.9%2017年度82.7%71.4%70.0%57.6%80.5%2018年度82.6%71.9%70.8%60.5%81.3%出所: NHS screening programmes:annual report各年度版より筆者作成。子宮頸がん乳がん大腸がん腹部大動脈瘤2014年度83.1%73.5%75.1%58.2%79.5%健保連海外医療保障 No.13048

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