健保連海外医療保障_No.130_2022年9月
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47健保連海外医療保障 No.130(1)NHS Health Checkの受診率表1  NHS Health Checkの受診者数および受診率運動量を増やすこと、血圧を低く抑えること」により疾患のリスクを低下できることを明確に国民に説明する、などの活動内容が示されている。さらに、第3セクターとも協力し、健康診断を受けに行きにくい人々のために、アクセスしやすい環境作りをすることを明言している。検診に関しては、これまで行われていた全国的に展開されてきた、検診や予防接種事業を進展させることが示された。これはⅡ.2.(1)で述べている専門家集団の委員による助言のことを指している。これにより、費用対効果の高い検診事業が達成できると考えられている21)。子どもの健康管理として導入されているHCPについても、この報告書で提案されている。この中で、健康的なライフスタイルは幼少期に培われるとし、子どもの健康管理のための事業、Child Health Promotion Programmeを創設すると述べている。この時点ですでに、現行のHCPで導入されているHealth visitorやSchool nurseといった高度な専門的スキルを習得した専門家によって、妊娠期間から青年期までの健康管理を実施することも示されていた22)。以上のような報告書の内容に基づき、2009年以降NHS Health CheckやHCPが実施されることとなる。検診事業はそれまで個別に行われていたものが、2013年度から新たに発足したPublic Health Englandに移譲され、総合的に管理されるようになった。こうした予防事業に関わる政策が実施される背景には、2000年から始まった総合的なNHS改革があった。すなわち、NHSに対する予算を大幅に増加させ23)、医療従事者の増員ならびに、医療施設の整備・増設を行うことで、NHSによる医療サービスの供給力を高め、第2段階において、患者の権利および医療機関の裁量権の拡大、新たな財政システムを取り入れるなど、改革を行うために必要な手段を導入した24)と言える。そうした基盤を整備した上で、全国的な健康診断や学校単位の健康管理などを行うことが可能になったと言えるであろう。心血管疾患の予防を目的に2009年に開始されたNHS Health Checkによる影響について、NHS Digitalが提供している「NHS Health Check Programme, Patients Recorded as Attending and Not Attending, 2012-13 to 2017-18」のデータを元に明らかにする。表1は、2012〜2017年度のNHS Health Checkの受診率を示したものである。NHS Health Checkの受診適格者はⅡ.1.(1)で示したように、40〜74歳で対象外となる条件に該当した者を除いた人数である。ただし、受診機会は5年に1度となっているので、各年度の適格者数は対象年齢となる人口の約1/5である。また、NHS Health Checkの適格者となる者全てを対象とした調査ではないが、John Robson, Isabel Dostal et al.(2015)では、2009年度から2012年度までの受診率が算出されている。それによると2009年度は5.8%、2010年度は14.6%、2011年度は24.4%、2012年度は30.1%となっている。表1の2012年度の受診率と比較すると、15%ポイントの差が生じているので単純健診受診者数2012年度733,9442013年度974,2672014年度1,146,7812015年度1,161,0272016年度1,141,5542017年度1,108,841出所: 「NHS Health Check Programme, Patients Recorded as Attending and Not Attending, 2012-13 to 2017-18」より筆者作成。各年度の健診適格者数受診率1,630,32745.0%2,113,95846.1%2,569,74744.6%2,623,66144.3%2,601,49743.9%2,703,46441.0%2. NHS Health CheckならびにNHS Screening Programme実施後の影響

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