健保連海外医療保障_No.130_2022年9月
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健保連海外医療保障 No.13034諸外国における健診・検診について数日後に対象者に結果が送られてくる。検査によって異常が見つかった場合は、医師あるいは助産師は、対象者が必要な追加的検査を受け、専門の医療職につながるように調整する。他のがん検診と同様に、検診費用はすべて医療保険によって負担される。第4次がん対策推進計画(2021-2030)では4つの柱が設けられており、その一つ目の柱は「予防を改善する」ことである。このために設けられた13の目標の一つが「検診へのアクセスを改善する」(第4次計画の86〜89ページ)とされており、背景には、がん検診プログラムへの参加が十分ではないという現状認識がある。なお、がん検診への参加の水準(対象となる人口に占める検診を受けた者の割合)については、フランスでは、欧州連合(EU)で推奨される水準との比較において議論されている。会計検査院の報告書では、EU諸国と比較すると、フランスにおける検診の参加率は平均以下であると評価されている(Cour des comptes 2021:56)。また、第4次計画では、乳がん検診と子宮頸がん検診への参加率はヨーロッパの平均に近いが、大腸がん検診の参加率は近隣諸国より大幅に低いと説明されている。それぞれのがん検診の実施状況は、以下のようになっている。乳がん検診の状況については、第4次計画によると、2018-2019年の組織的な検診への参加率は49.3%(これに個別検診10~15%が加わる)であった。また、2021年の会計検査院の報告書では、乳がん検診への参加率は53%とされているが、この割合が71〜77%のオランダやイギリス、さらに80%を超えるデンマーク、フィンランド等と比べると、十分な成果が上がっているとはいいがたい状況であるとされている(Cour des comptes 2021:56)。さらに大腸がん検診の実施状況については、第4次計画では2018-2019年の当該検診への参加率は30.5%であったことが示されている。また、会計検査院の報告書によれば、フランスにおける大腸がん検診への参加率は24〜34%であるが、EUの大腸がんの検査・診断の質確保ガイドラインによれば、大腸がんの罹患率を10%下げるためには、検診への参加率が少なくとも45%、理想的には65%に達することが必要であり、フランスはこの最低水準からもほど遠い状況にあるとされている(Cour des comptes 2021:57)。組織的な検診が2019年に開始されたばかりの子宮頸がん検診については、第4次計画では2016-2019年の検診のカバー率が59.5%であったことが示されている。子宮頸がん検診については、組織的な検診が導入されるまでは個別検診(医師の処方により実施され、医療保険から費用が償還される)が中心であった40)。今後は、組織的な子宮頸がん検診の比重がしだいに高まっていくと考えられる。経済的な規模でみても、医療保険のなかで提供されるワクチン接種や検診等の予防医療の規模は小さくはない。会計検査院の2021年の報告書によると、2019年の予防(ワクチン接種や検診等の制度的な予防+医療保険の償還対象となる予防)の総費用はおよそ150億ユーロであり、その約6割(91億ユーロ)が医療にかかわる専門職のもとで提供され、医療保険からの償還が行われている(Cour des comptes 2021:44-9)41)。医療保険のなかで提供される予防としては、ワクチン接種(予防プログラム以外で提供されるもの)、検診(組織的な検診以外のもの)、医師の診察のなかで行われる衛生栄養学および予防に関する助言などがある(Cour des 4. がん検診の実施状況Ⅳ. 医療保険の給付に含まれる健診・検診これまで検討してきた健診センター等による健診、さらには組織的に展開される検診に加えて、医療保険の給付のなかでも健診・検診が行われている。とりわけ、かかりつけ医による定期的な健康状態の確認や予防的な検査の処方など、医療保険の給付として行われている健診・検診の役割は大きい。

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