33健保連海外医療保障 No.130ためには、両者をあわせて捉える必要があるが、ここでは前者の組織的ながん検診に焦点を当て、具体的な内容を見ていく。質が確保されたがん検診を統一的に実施するため、がん検診プログラムに関する2006年9月29日のアレテ34)により、検診の種類ごとに詳細にわたる実施要領(cahier des charges)が定められている35)。2004年から実施されている乳がん検診は、全国的な組織的がん検診プログラムのうち、最も早く導入された検診である。乳がん検診の対象は、50歳から74歳の女性(無症状で特別のリスク要因がない者)であり、およそ1,000万人がその対象となる36)。対象者は、2年ごとに無料(医療保険が100%負担)でマンモグラフィと放射線専門医による臨床検査を受けることができる37)。乳がん検診プログラムの流れは、おおむね次のようになる。まず、対象者のもとにCRCDCから郵送で検診の案内が届く。そのなかに同封された承認を受けた放射線専門医のリストから希望する専門医を選んで予約をとり、その専門医の診察室に出向いて検査をうける。異常が発見された場合は、ただちに当該専門医による診断がなされ、必要な場合は追加検査が実施される。異常が見つからなかった場合は、当該専門医のもとからCRCDCに画像が送られ、他の放射線専門医による再読影が行われる。2週間以内に検査結果と画像が対象者のもとに送られてくる。異常がなければ、2年後に再びCRCDCから検診の案内が届くこととなる。次に導入されたのは大腸がん検診であり、2008年から実施されている。対象となるのは50歳から74歳の者(無症状で特別のリスク要因がない者)であり、2年に一度、検査を受けることができる(検査費用は医療保険が100%負担)。乳がん検診と異なり、大腸がん検診は対象者の自宅で実施する。大腸がん検診プログラムの流れは次のようになっている。対象者は検査を受けるために検査キットを入手する必要があるが、これにはいくつかの方法がある38)。一般的には、対象者のもとにCRCDCから検査の案内が届いたら、かかりつけ医の診察の際に検査キットを受け取る。その後、自宅で免疫学的便潜血検査のための採便を行い、指定された検査機関に郵送すると、2週間以内に検査機関から検査結果が送られてくる。検査結果は、対象者のかかりつけ医とCRCDCにも伝達される。検査の結果、潜血が認められれば、原因をつきとめるための結腸内視鏡検査を実施するために、かかりつけ医が対象者を消化器科専門医に紹介することとなる。検査結果に異常がなければ、また2年後に検査をうけることになる。子宮頸がん検診プログラムは、2019年に導入された比較的新しい取組みである。子宮頸がんをめぐって政府は、毎年1,100人以上の女性がこのがんで命を失っていること、診断後の5年生存率が低下傾向にあること(1989-1993年は68%であったのに対して、2005-2010年では62%)、毎年3,000件の子宮頸がんの診断がなされているにもかかわらず、多くの女性が検診を受けておらず、とりわけ最も弱い立場にある人々がそのような状態にあること(当該がんに関しては、社会経済水準が死亡率に明らかな影響を有していること)を問題視していた39)。先に見た第3次がん対策推進計画(2014-2019年)でも、対象となるすべての女性が子宮頸がん検診を受けられるよう、検診を一般化することが求められていた。このような状況のなか、子宮頸がん検診は三番目のがん検診プログラムとして導入された。子宮頸がん検診の対象は25歳から65歳までの自覚症状のない女性である。25歳から29歳の女性に対する検査(子宮頸部細胞診)は、最初の2回は毎年実施し、異常がなければ3年後に実施することが、30歳から65歳の女性には5年ごとに検査(高リスク型ヒトパピローマウイルス(HPV)検査)を実施することが推奨されている。検査は、婦人科医あるいは一般医によって診察のなかで実施される場合、妊娠中の健診の際に助産師によって実施される場合、健診センターで実施される場合等がある。採取された細胞(あるいは検体)は検査機関に送られて分析され、
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