健保連海外医療保障_No.130_2022年9月
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健保連海外医療保障 No.13030(3)児童を対象とした健診諸外国における健診・検診について妊娠期間中と産後の医学的観察(surveillance médicale)を受けることが定められており、この医学的観察には、医師あるいは助産師によって実施され、あるいは処方される産前産後の義務的な検査が含まれる(公衆衛生法典L2122-1)。妊産婦の健診制度を担当しているのは国と地方自治体(県の母性・児童保護)であるが、検査の費用は医療保険によって負担される。妊産婦の健診は、妊娠期間中に7回、産後に1回実施される。最初に、妊娠3か月以内に医師あるいは助産師によって1回目の診察が行われる。その後、4か月目に2回目の診察、5か月目に3回目の診察というように診察が毎月行われ、9か月目に7回目の最後の診察が行われる。また、妊娠期間中の定められた時期にエコー検査等の必要な検査が行われる18)。産後には、8週間以内に義務的な産後検査が実施される。なお、2021年12月23日の2022年社会保障財政法により、2022年7月1日からは産後4週間から8週間までの間に医師あるいは助産師による産後の面談(entretien)が行われることとなった。児童を対象とした健診は、公衆衛生法典と教育法典19)によって規定されている。公衆衛生法典では、18歳までのすべての児童は義務的な検査を含む保健・社会的予防施策を享受するとされ、3歳までに14回、4歳から6歳までに3回、7歳から18歳までに3回、合計で20回の健診を受けなければならないと定められている(公衆衛生法典L2132-2, R2132-1)。義務的な検査は医療保険によって費用が償還されるため、児童の家族に金銭的な負担は求められない。0〜6歳までの児童に対する検査を行うのは、児童のかかりつけ医や児童の親が選択した他の医師、学校医(幼稚園(義務教育)に通う3歳と4歳の児童に対する健診の場合)等である。年齢に応じて検査の内容や時期は異なるが、例えば、検査が集中的に行われる6歳までの児童に対しては、成長曲線、精神運動性、児童の感情生活、異常や障害の早期検査、ワクチン接種、健康によい行動と環境等に関する検査が実施される20)。これまで、主に健康状態の確認や疾病予防を目的とした健診について見てきたが、特定の疾患の有無を確認するための検診も多様な形態で実施されている。検診の対象者が実際に検診を受けるためのルートは、大きく二つに分けて考えることができる。一つは、年齢等の一定の条件に該当する者に対して、あらかじめ定めた方法で統一的に実施される検診(組織的な検診(dépistage organisé)と呼ばれる)を受けることである。組織的な検診は、実施体制や方法に関する法制度も整備されており、制度化された検診であるといえる。組織的な検診に加えて、フランスでは、通常の医療職の実践のなかで医療保険の給付として行われる予防的な検診が存在しており、組織的な検診と区別する際には個別検診(dépistage individuel)と呼ばれる。ここではまず、全国的に展開され、予防政策において重視されている組織的ながん検診に注目して検討を行うこととしたい。がんはフランスにおける死亡原因の第一位であり、毎年、それによって15万人が命を失っている21)。今日、少なくとも40%のがんは回避が可能であるとされている22)。このような状況のなかで、がん検診を広く展開し、検診への参加率を高めることは、政府の優先課題である「がんとの闘い(lutte contre les cancers)」における重要施策の一つとなっている。フランスでは、がんを可能な限り予防し、治療を改善するために、2003年以降、政府によって「がん対策推進計画(Plan cancer)」(第1次計画2003-2007年、第2次計画2009-2013年、第3次計画2014-2019年)が策定されてきた。これらの計画を通じて、がんの予防や治療をめぐる取組みが強化され、がん検診も段階的に拡Ⅲ. 検診1. がん検診をめぐる政策の状況

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