健保連海外医療保障_No.130_2022年9月
27/80

健保連海外医療保障 No.13024フランスでは「予防」が重要な政策課題となっており、健診・検診を推進するための取組みが積極的に行われている。とりわけ、医療保険の関与のもとで実施されている「健診センターにおける健診」と「組織的ながん検診」は注目される取組みである。また、医療保険の給付としてかかりつけ医等を通じて行われている健診・検診も存在する。 本稿では、フランスにおいて多様に展開されている健診・検診の制度的な枠組みを整理し、医療保険とかかりつけ医の役割に注目しながら、その特徴を明らかにする。諸外国における健診・検診について近年のフランスの医療保障政策において、「予防(prévention)」はますます重要な位置を占めるようになっている。フランスでは、すべての人に医療へのアクセスを保障することとあわせて、すべての人に「予防」へのアクセスを確保することが重要な政策テーマとなっている。社会的に弱い立場にある人々の「予防」へのアクセスにも政策的関心が向けられている。このような政策の動きのなかで、フランスに住む人々が疾病予防やその早期発見のために推奨される検査を適切に受けることができるよう、積極的な取組みが行われている。しかしながら、健診・検診をめぐる取組みについてはさまざまな課題が指摘されている。なかでも、検診の参加率については国際比較の観点からも十分な水準ではなく、現状の取組みには改善の余地があるとされている。そのような課題はあるものの、フランスには独自の健診・検診の制度や政策の方向性が見られ、それらを考察することを通じて、健診・検診制度のよりよいあり方を検討するための視座が得られるのではないかと考える。このような問題意識のもとで、本稿は、フランスにおいて多様に展開されている健診・検診の制度的な枠組みを整理し、その特徴を明らかにすることを目的とする。疾病予防や早期発見のために実施されている多様な検査については、フランスでは「健診(健康づくりの観点から経時的に把握される検査群)」と「検診(疾患を確認するための検査群)」は明確に区分されていない。また、それらを区分することが難しい場合もある。そうではあるが、日本の健診・検診制度との比較可能性を高めるため、本稿では、できる限りこの区分をふまえてフランスで実施されている検査の位置づけを整理することを試みる。なお、本稿はフランスで実施されている健診・検診のうち主要なもののみを対象としており、すべての検査を網羅的に取り上げたものではない。フランスの主な健診・検診の位置づけをおおまかに整理したものが図1である。本稿ではとくに、フランス独自の取組みである「健診センターにおける健診」、近年取組みが強化され大分大学教授松本 由美Matsumoto Yumiはじめに特集:諸外国における健診・検診についてフランスにおける健診・検診―医療保険とかかりつけ医の役割―

元のページ  ../index.html#27

このブックを見る