15健保連海外医療保障 No.130上の健診の検査項目が拡充されたが、その代わりに、35歳以上の健診は従来の2年ごとが3年ごとになった。この変更理由としても、現在の研究によれば、健診によって国民の寿命が伸びることが証明されていないから、ということが挙げられていたという75)。マンモグラフィ・スクリーニングによって乳がんによる死亡率を引き下げるためには、乳がんを早期に発見し、進行した状態になってから気がつくということのないようにしなければならない。マンモグラフィ・スクリーニングの評価においては、欧州ガイドラインが定める基準値を参考にして検査結果を検証し、当該プログラムが死亡率の引き下げのための条件を満たしているかどうかが確認される。スクリーニングの通知を送付したのは、50〜69歳の女性の約半数(2年に1回の検査のため)である約570万人であり、そのうち約290万人がスクリーニングを受けた(約50%の受診率)。このうち、1万7,509人の女性にがんが発見された(1,000人中5.9人)。検査結果の検証においては、スクリーニングを初めて受けるケース(16%)と、2回目以降のケース(84%)に分け、2回目以降のスクリー(2)がん検診「組織的ながん早期発見プログラム」の枠組みで行われるがん検診については、プログラムの有効性、質および安全性を監視するために76)、公的な評価が行われることになっている77)。以下では、乳がんマンモグラフィ・スクリーニングおよび大腸がん検診の評価の概要を紹介する。1)乳がんマンモグラフィ・スクリーニングマンモグラフィ・スクリーニングの評価は、疾病金庫と保険医団体が共同で2003年に設立したマンモグラフィ協力機構(Manmmographie Kooperationsgemeinschaft)が行っている78)。2019年の検査データに基づく評価報告書は、2021年11月に公表された79)。評価報告書の要旨の概要は、次のとおりである。ニングの検査結果のデータが用いられた。これは、初回にスクリーニングを受けるのは検査対象の年齢層に新たに達した女性が多いが、がんの発見率は、初回のケースが1,000人中7.7人、2回目以降のケースが5.6人など、両グループの検査結果には違いがあり、初回にスクリーニングを受けるグループの方が、乳がんが発見される可能性が大きいためとされている。2回目以降のケースで発見されたがんの19%は非浸潤(上皮内)がん(In-situ-Karzinome)であり、78%は浸潤がんであった。浸潤がんの大きさは、80%が20mm以内、58%が15mm未満、35%が10mm以内であった。また、浸潤がんの81%ではリンパ節転移が見られず、発見されたがんのうち21%は、予後がよくないとされるUICCの分類Ⅱ+であった。この結果から、2回目以降のスクリーニングで発見されたがんのステージ分布は、プログラムの導入前と比べて改善され80)、欧州ガイドラインの全ての基準を満たすとされている。中間期がんについては、2008〜2012年に行われたノルトライン・ヴェストファーレン州およびニーダーザクセン州の検査結果をがん登録簿のデータと照合した2018年評価の結果を引用し81)、中間期がんの発見率から見ても、欧州ガイドラインの基準(30〜50%)を満たすとしている。評価報告書は、これらの結果の検証により、マンモグラフィ・スクリーニングにより乳がんを効果的に早期発見できることが証明されているとし、2016年以降のがん登録簿のデータからも、プログラム導入以降に当該年齢層において乳がんが進行したステージで見つかることが減少しているとしている。2)大腸がん検診(内視鏡検査)大腸がん検診については、16州の保険医協会と連邦保険医協会が共同で設置・運営するドイツ保険医中央研究所(Zentralinstitut für die kassenärztliche Versorgung in Deutschland)が、2003年から2019年まで内視鏡検査の評価を
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