健保連海外医療保障 No.13014(1)健診諸外国における健診・検診について改善すること、②同時に、国民医療のレベルでは、有効性が証明されたがんの早期発見プログラムの参加率を可能な限り高いものとすることとされている71)。情報提供を受けた個人は検査を受けないことを決定することにもなるため、この2つの目標は相矛盾するとも言えるが、がんの早期発見は、全体のレベルでは当該がんによる死亡率を引き下げる一方、個人のレベルでは検査自体により身体を害する可能性があり、偽陽性により不要な不安が引き起こされるといったデメリットも大きいため、参加しないという選択も正当化されるとされる72)。一般健診について、連邦共同委員会の指針では、独立した学術機関にその評価を委託することを意図している(beabsichtigen)とされるが、2022年3月現在、そのような評価に関する報告書が公刊されていることはインターネット上で確認できない。「組織的ながん早期発見プログラム」の枠組みで行われているがん検診(乳がんマンモグラフィ・スクリーニング、子宮頸がんおよび大腸がん検診)については、連邦共同委員会の指針において、その評価を行うことが定められている。しかし、子宮頸がん検診が「組織的ながん早期発見プログラム」の枠組みで行われるようになったのは、2020年1月からであり、2022年3月現在、初回の評価はまだ公表されていない。以下では、健診の効果について医療技術評価機構(Institut für Qualität und Wirtschaft-lichkeit im Gesundheitswesen: IQWiG)73)がそのウェブサイトに掲載している内容と、乳がんマンモグラフィ・スクリーニングおよび大腸がん検診の評価の概要を紹介する。医療に関する事項について証拠に基づいて決定することを目的とするIQWiGは、そのウェブサイト「gesundheitsinformation.de」において、医療に関する情報を包括的に掲載している。このウェブサイトでは、定期的な健診の受診の効果は証明されていないとしている74)。ただし、これは、IQWiG自身の調査研究によるものではなく、デンマークにおける25万人の受診者の30年にわたる追跡調査の結果に基づく記載である。当該ウェブサイトでは、初めに、健診の有効性の検証の必要性が強調されている。すなわち、健診は、受診者の健康を実際に改善すること、例えば病気の予防につながるというようなことがある場合に、医学的な価値がある。また、健診ではリスク要因が特定されるが、リスク要因の特定のみで病気を予防することは、実はそれほど容易なことではなく、同時に、生活習慣の永続的な変更や、降圧剤の長期的な服用といった予防措置も採られなければならない。これらの予防措置は、病気予防のために有効でなければならず、健診についても、そのメリットがあるかどうかの検証が重要であるとされる。次に、前述のデンマークにおける調査結果が紹介されている。健診では、しばしば高めの血圧やコレステロール値が確認されるが、この追跡調査の結果によれば、受診者が健診を受診しなかった者より長く生きたということはなく、受診者であっても心疾患で死亡した者も少なからずいたことは、受診しなかった者と同様であった。この調査結果について、当該サイトでは、健診を受診しなくても、かかりつけの家庭医が健康上のリスクを見て取り治療を提案することがあること、重要な兆候は健診の場でなくても十分早期に明らかになる可能性があることを指摘している。また、健診では、必ずしも健康に悪影響を及ぼさず、治療の必要のない若干高い血圧値やコレステロール値が発見されることもあり、不要な不安を抱くことになる可能性、また、不要な治療に結びつく可能性があることから、そのデメリットも考慮することが必要であるとされる。健診に関する連邦共同委員会の指針の2018年改訂(2019年施行)では、18〜34歳までの間に健診を1回受診することが可能となり、35歳以2. 評価
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