健保連海外医療保障 No.13010諸外国における健診・検診についてトが明確でないことが理由とされる49)。以下では、マンモグラフィ・スクリーニングについて概説する。マンモグラフィ・スクリーニングは、2002年6月28日の連邦議会の決議「乳がん:早期発見、医療および研究の質の改善」50)を受け、2005〜2009年にかけて全ての州で導入された51)。マンモグラフィ・スクリーニングが「組織化されたがん早期発見プログラム」に組み込まれたのは2019年であり、以降、対象年齢に達した被保険者は、2年ごとに、疾病金庫から検診の通知およびこれに関する情報提供を受けるようになった。スクリーニングによる乳がんの早期発見は、対象者集団における乳がんによる死亡率を低減することを目的とする。しかし、同時に、スクリーニングと関連する負担を最小限としなければならない。スクリーニングの通知には、対象の女性が検査のメリット・デメリットについて不安がある場合には、医師から口頭で説明を受けることができる権利についても記載される。また、この通知には、検査を受けるか否かの決定を支援するための文書「決定支援(Entscheidungshilfe)」が添付され、この文書では、検査を提供する理由、および検査の目的・内容・方法が説明されている。さらに、「決定支援」では、早期発見が重要であると同時に、マンモグラフィを受けることによって乳がんの発生を防ぐことはできないこと、異常所見があった場合(1,000人中30人)に必要な更なる検査、最終的にがんが発見される確率(1,000人中6人)、処置の必要のない無害ながんが見つかり手術等の治療につながるおそれのある過剰診断の可能性、マンモグラフィによる被爆放射線量等について、情報提供がなされる。マンモグラフィ・スクリーニングは、①問診、②マンモグラフィ(上下方向・斜め方向)、③2人の医師による二重読影、④7日以内の所見の通知により構成される52)。2人の医師による読影は独立して行われるが、異常な所見があった場合にはカンファレンスが行われる。スクリーニングの一連のプロセス(対象者への検査通知、所見の伝達、必要な場合に治療開始)の質確保はとりわけ重要とされ、連邦保険医協会と公的医療保険中央連合会が結ぶ連邦包括契約(Bundesmantelvertrag)の附則53)でも、マンモグラフィ・スクリーニングの要件が詳細に定められている。マンモグラフィ・スクリーニングの評価は、①通知率、②受診率、③早期発見プログラムにおける乳がん発見率および発見された石灰化のステージの内訳、④対象者集団における乳がん死亡率・罹患率および石灰化のステージの内訳等について行われる。子宮頸がん検診についての連邦共同委員会の指針は、次項の大腸がん検診について定める指針と共通である56)。この指針では、連邦共同委員会は両がんについて行われる「組織的ながん早期発見プログラム」を評価し、2年ごとに報告書を公表することを定めている。対象者には、分析のために匿名で個人データが使用されること等が、検診の通知において説明される。受診者は、データの保存および利用について、何時でも異議申立てを行うことができる。子宮頸がん検診の評価は、①受診率、②陽性結果、偽陽性、③中間期がんの発見率、偽陰性、2)子宮頸がん検診(20歳以上の女性)20歳以上の女性の被保険者は、子宮頸がん検診を受けることができる。子宮頸がん検診は、2020年1月から「組織的ながん早期発見プログラム」の対象であり、20〜65歳の女性は、5年ごとに子宮頸がん検診についての通知を受ける。20〜34歳の女性は、毎年、問診・視診・触診の上、パップテストによる検査を54)、35歳以上の女性は、3年に1回、パップテストとHPV検査の組合せによる検査を受けることができる。パップテストは、子宮頸部の細胞を採取して、細胞の変化を顕微鏡で調べる検査であり、HPV検査は、当該採取した細胞を利用してウイルス感染を調べる検査である55)。
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