健保連海外医療保障 No.13082)特定の病気を対象とするスクリーニング(がん以外)①腹部大動脈瘤諸外国における健診・検診について健診の内容は、次のとおりである。① 問診(既往歴、喫煙、肥満、家族の既往歴の確認)既往歴としては、高血圧症、虚血性心疾患、動脈硬化、糖尿病、高脂血症、腎臓病、肺疾患、がん(特に遺伝性のある乳がん、大腸がん、皮膚がんの一種である悪性黒色腫(メラノーマ))、その他の病気が確認される。また、個人的なリスク要因として、肥満、喫煙、飲酒、運動不足、継続した精神的ストレス、心血管疾患リスク(既往歴に基づき必要な場合に限り、リスク・チャートを用いる34)。)が把握される。②身体(全身)検査身体検査では、胸郭の視診、心臓聴診、肺聴診、腹部の触診(腎臓の触診を含む。)および頸動脈聴診が行われ、ならびに足の脈拍、運動器官、皮膚、感覚器官、神経系、精神状態、体重、身長および血圧(最高/最低)が検査または測定される。③検体検査18〜34歳の被保険者については、血液検査により、脂質(総コレステロール、LDLコレステロール、HDLコレステロール、中性脂肪)および空腹時血漿血糖値が検査される。35歳以上の被保険者については、上記の血液検査に加え、尿検査(尿蛋白、尿糖、赤血球、白血球、亜硝酸塩)も行われる。④予防接種記録の確認⑤検査結果の説明および助言医師は、健診を受けた被保険者に対し、問診および各検査の結果を説明し、健康によくない生活習慣を変えるための具体的な支援(例えば、スポーツクラブにおける運動や、バランスのとれた食事を促すサービス、前述の生活習慣病の予防を目的とする講座等)に関す1)一般健診被保険者は、18歳から34歳までに1回、35歳以上は3年ごとに、健診を疾病金庫の負担で受けることができる。健診を実施する医師は、一般医または内科医である。る情報を提供する35)。医師は、被保険者と話し合いながら、生活習慣を変える潜在的可能性を見いだし、生活習慣を変えるような動機付けを行う。医学的に適切である場合には、医師は、生活習慣病予防のために疾病金庫が助成する講座の受講を勧告する。この勧告は、医師の証明書の形式で発行される。医師は、また、被保険者が受診することができる特定の病気を対象とする健診や、がん検診を教示するほか、家族の既往歴に基づいて健康上のリスクがある場合には、これを説明する。健診の結果、病気またはその疑いが存在する場合には、医師は、必要に応じて診察および治療を受けるよう、被保険者を促す。2018年1月1日以降、65歳以上の男性の被保険者は、1回に限り、腹部大動脈瘤の超音波検査36)を任意で無料で受けることができるようになった。この検査は、腹部の大動脈の拡張(大動脈瘤)を早期に見つけるためのものである。気がつかずに腹部大動脈瘤を放置しておくと、突然破裂して内出血を起こしたり、血栓ができて下肢の血流障害が起きたりするため、予防が重要とされている37)。患者は女性よりも男性の方が多く、65〜75歳の男性の2%に腹部大動脈瘤が生じているとされる38)。連邦共同委員会は、検査に関する情報提供としてパンフレットを作成している39)。このパンフレットには、65歳以上の男性に検査が必要な理由、有所見率、検査のメリット・デメリット、腹部大動脈瘤の治療に関する情報が分かりやすく記載されている。検査のメリットとしては、早期に腹部大動脈瘤を発見し対策をとることで、65歳以上の男性1,000人のうち、大動脈瘤の破裂を3人、大動脈瘤を理由とする死亡を3人減らすことができるとされる40)。デメリットとしては、大動脈瘤には
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