健保連海外医療保障_No.130_2022年9月
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7健保連海外医療保障 No.130(2) 「組織化されたがん早期発見プログラム」(一部のがん検診)(第25a条)(3) 乳幼児・青少年を対象とする健診(第26条)(1)成人を対象とする健診・検診の概要めに必要な知見を得るための試行に関する指針を決定しなければならない。疾病金庫が費用を負担するがん検診には、①疾病金庫からの被保険者への通知(ドイツ語では「招待(Einladung)」)により検査についての情報提供が行われるものと、②特に疾病金庫から被保険者への個人的な通知がないものがある。しかし、どちらの場合であっても、実際に受診するか否かについては、本人が決定する。前者(①)は「組織化されたがん早期発見プログラム(organisiertes Früherkennungsprogramm)」の枠組みで行われており、このプログラムは、がん検診の受診率を引き上げることを目的とする。本項では、その概要を紹介する。疾病金庫による「組織化されたがん早期発見プログラム」は、欧州委員会の「がん早期発見プログラムの質確保のためのガイドライン」29)(以下「欧州ガイドライン」)に従って行われるが、欧州ガイドラインは拘束力を持たないため、プログラムが対象とするがん種はドイツが独自に検討することができる30)。現在ドイツでその対象とされているのは、乳がんのマンモグラフィ・スクリーニング、子宮頸がん検診、大腸がん検診である31)。「組織化されたがん早期発見プログラム」の特徴は、次の4点である。すなわち、①対象の被保険者に、定期的に文書やメール等で当該の検診について通知および情報提供すること、②通知において、検診の効用およびリスク、個人データの取扱い、個人データ保護の措置、ならびに以降の通知を希望しない権利等について分かりやすく情報提供すること、③対象者群、検査方法、検査の頻度、対象年齢、異常所見の解明方法および質確保のための措置を定めること、④受診率、中間期がん32)の発見率、偽陽性の診断および受診者の当該がんによる死亡率を考慮して、プログラムの質の体系的な把握、監視および改善を行うことである。④の措置に関連して、当該がん検診の受診者における中間期がんの発見率および当該がんによる死亡率を把握するために必要な場合には、本人の異議がない限り、検診のデータとがん登録簿(Krebsregister)のデータとの照合が行われる。連邦共同委員会は、また、学術的な研究目的でデータを使用したいとの申請があった場合には、申請者の正当な利益を考慮して、匿名化したデータを提供することができる。申請を拒否する場合には、理由を付さなければならない。被保険者の家族である18歳未満の乳幼児・青少年は、その身体的、知的または精神的な発達を少なからず阻害する病気の早期発見のための健診を受ける権利を有する。この健診においては、健康上のリスクの把握および評価、予防接種記録の確認、病気予防のための助言が行われる。必要な場合には、医師の証明書の形式で、病気予防のための勧告が発行され、疾病金庫による生活習慣病の予防のための給付(第20条第5項)が、乳幼児・青少年または保護者に対して勧奨される。乳幼児・青少年を対象とする健診の詳細(検査内容、対象年齢、検査の頻度等)も、連邦共同委員会の指針において定められる。疾病金庫は、州の所管機関と協力して、対象者に対し、受診するように働きかけなければならない。上述のように、各健診・検診の詳細は、連邦共同委員会の指針において定められている。本節では、指針で定められた健診・検診の概要を紹介する。成人を対象とする健診には、1)一般健診と、2)特定の病気(腹部大動脈瘤およびB型肝炎・C型肝炎)を対象とするものがある33)。2. 健診・検診の概要

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